短編(男日) | ナノ


▽ 放課後の訪問者


「……生徒会長?」


放課後。授業が終わり帰宅しようと思っていると、我が東高の生徒会長も下駄箱に居た。いや、普通の生徒ならば授業が終わって下駄箱に向かうという行動は何の問題もない。が、先ほども言ったように彼女は生徒会長だ。生徒会室に寄らずに帰ろうとしていることが不思議で仕方がない。


「そういえば…文化祭以来北高の生徒会と交流が増えたって噂があったような…」


そうか。つまり、生徒会長は北高の生徒会室に行こうとしているのか?


「気になる…」


生徒会長が何処に行こうが私には関係ないことだけど、行く先が北高の、しかも生徒会室となると話は別だ。
北高にはとしゆきが居る。
いや、別にウチの生徒会長がとしゆきとどうのこうのってあるわけがないとは分かっている。けど、気になる。
同じ生徒会として仲良くなって…てこともありえるし。って、私は何を心配しているんだ?これじゃあ私がとしゆきのことを好きみたいじゃないの!


「誰があんな奴…。っと、いけない、見失う!」


考え込んでいるといつの間にか生徒会長は靴に履き替えて、下駄箱から姿を消して居た。私も急いで靴に履き替えて彼女の後を追うことにする。
……ホント、私って何やっているんだろ。


「……やっぱりこの道を通るってことは北高に向かうんだ」


小走りで追いかけると生徒会長に追い付くことが出来た。彼女は背が低い分、歩幅もそこまで大きくないから助かった。…私も人のことは言えないけど。

暫くついていくと、予想通り北高にたどり着いた。やはり、生徒会長は北高の生徒会室に行くみたい。
私は彼女に気付かれないように一定の距離を保ちながら引き続き後を着けて行く。


「1人で生徒会室に入って行っちゃったよ…」


私は、というと北高の下駄箱の陰から生徒会室を見ている。あぁ、ここまで着いて来たのはいいけど、これからどうしたものか。同じように生徒会室に入るわけにはいかないし。……いや、まてよ?"相談がある"なんて言えばすんなり入れてくれるのではないのか。でも、東高の生徒がなんで北高に、って話になってしまうな…。うーん、どうしたものか。


「……忍?」


ま、まぁ、生徒会長が此処に通っている、と分かったから、生徒会をやっている友達に生徒会長のことについて聞いてみようかな?北高の生徒会と交流があるみたいだけど、なんかこう…恋絡みとかないのかって。


「おい、無視か」


でも、それ聞くのってなんかおかしくないかな?それじゃあ私が本当にとしゆきに気があるみたいじゃないの。
いやぁね?わ、私は…としゆきが私以外の女子とどんな風に関わっているのかが気になってね。べ、別にそういうアレじゃないのよ、うん。
……あれ、なんかとしゆきの声が聞こえた気がする。


「って、と、としゆき!?どうして此処に!?」


振り向くと、いつも通り白いキャップ帽をかぶったとしゆきが居た。つーか、なんで生徒会室に居ないの!?


「それはこっちのセリフだ。どうして東高のお前が此処に居る」

「ど、どうしてって…それは…その…」


ウチの生徒会長がとしゆきのところの生徒会室に出入りしているから、なんて言えない。
……ここはどうやって言い訳をしようか。ああ、早く言わないととしゆきが不審に思う。


「……なんだ」

「わ、私も生徒会に入ったんだ!」

「嘘を吐くな」

「何故バレた!?」


く、くそう!生徒会に入ったなんて言えばすんなり納得してくれると思ったのに!


「お前のような奴が生徒会に入るとは思えない」

「失礼な!」


た、確かに私は模範生にはなれないよ!?
うう…としゆきの視線が痛い。


「とりあえず入校許可書をつけろ」

「あ、うん…ありがと」


としゆきはポケットの中から入校許可書を取り出し、それを私に渡してくれた。
そうだよね、他校の生徒だから許可書をつけないといけないよね。


「まあ…立ち話もなんだから生徒会室に来い」

「え、いいの?てか、私、生徒会でも何でもないのに…」


それに、今、北高の生徒会室にはウチの生徒会長も居る。生徒会の話をしている中に部外者の私が居ても問題ないのだろうか…。


「構わない。さっきまでトランプしていたから」

「何やってんの!?」


生徒会って学校の顔でしょ?そんな人らが仕事もしないで何トランプやってんだよ!


「話を聞いてなかったのか?トランプをしていた」

「そうじゃねーよ!」


生徒会が何トランプやってんのって言いたいのよ私は!
としゆきは私の気持ちが理解出来ずに首をかしげる。いやいや、何で分からないんだよ。まあいいや。


「生徒会室ってあれだよね?」

「ああ。って…なんで知っている?」

「え、あ…ま、まぁ色々あってね!」

「……?」


私はこれ以上聞かれないために先に生徒会室へと足を向けたが、


「で、何で北高に?」


としゆきがソレをさせてくれなかった。


「………」


勿論私は無言。前に進む足もピタリと止まった。


「分かった。そういうことか」


え、まさかバレた?いや、でもとしゆきに限ってそんな気付くわけないし…


「……ヤキモチ?」

「ち、違っ…!」


何でバレてんだぁぁああ!
恥ずかしい。恥ずかしいぞ。ああ、頬が熱い。


「安心しろ。お前んところの生徒会とは何もない」

「だーかーらー!」

「……俺は、お前が…」

「……え?」

「いや、何でもない。生徒会室へ行くか」

「ちょ、え?そこまで言っておきながら何もなかったことにするの!?」


としゆきはそれ以上は言ってくれなくて私の横を通り過ぎて生徒会室へと向かった。





放課後の訪問者

忍の反応は面白い





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後書き

唐沢夢2作品目。
やっぱ私にはサッパリヒロインが向いているな。とても書きやすいとても!

ミツオ君夢も書いてみたいけど、アニメでまだそんなに出てないから書けない…orz
管理人、漫画はまだ3巻までしか買ってないです(笑
何情報だ。
(2012.02.19)
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