短編(男日) | ナノ


▽ 日本語を勉強してこい


休日の朝。
私はいつものように遅くまで寝ようとしていた。
だって平日は学校があるから朝早く起きないといけないから休日ぐらいはゆっくりと寝ておきたいものである。
なのに…

プルルルル―…

私の携帯は鳴り響いた。

誰だ、私の眠りを妨げる者は。今度会ったらシメるぞ。まあ、メールだから半殺しで我慢してやろう。
布団の中でもぞもぞと動きながら私は枕元にあった携帯を手に取ってメールを確認した。
しかし、送り主は私が登録しているアドレスではなかった。ああ、もしかしてアドレス変更した奴かな?誰だろ。


『アドレス変えました。登録お願いします』


うん、誰だ。マジで。
一斉送信者を見ても知ってそうな人は誰一人いない。
いやあ、たまに居るよね。名前を載せずにアドレス変えましたってほざく人。まったく、送る前に一度確認してからにしてよ。


「とりあえず送るか…。"誰?"っと…」


カチカチカチっとボタンを押して送信。
パタンと携帯を閉じてまた枕元へと置いた。


「まあ、色んな奴に送って居るだろうから…暫くは返事返って来ないよね」


そんなことを思いながら私はもう一度眠りにつこうとした。
が、空気を読まない私の携帯電話はまた鳴り響いた。
返信はえーよ。もう少し寝かせてくれよ。


「…なになに?」


目が半開きの状態で私は画面を見つめる。


『確かにさ、高校になって会う回数は減ったけどその態度はあんまりじゃね?』


は?
いやいや、なんで私が怒られなきゃならんのだ。
そっちが名前を載せていないのが悪いんでしょ。
あーもう、面倒だなコイツ。ホント誰だよ。男なのか女なのかも分からんし。


「"いや、そうじゃなくてさ。誰だよ"っと…」


私はもう一度、名無しの奴にメールを送った。
二度寝しようかと思ったけど、またメールが送られてきそうなので私はメールが返ってくるのを待った。だって寝る体勢に入ったのにまた携帯が鳴ると気分が害されるし。

案の定、私が送って5分もしないうちに返事が返ってきた。


『そんなに俺をいじめて楽しいか!ああそうか分かったよ!もう忍にはフランクフルト奢ってやんねーからな!』


分かった。お前、ミツオ君だな。
このバカみたいな文面でようやくわかったよ。てか、最初の時点で気付くべきだったわ。
私はため息を吐いた。


「"アドレス変更するのは良いけどちゃんと名前載せろよ。ミツオ君。"っと…」


さあてと。これで送り主が誰か判定できたし、私はもうひと眠りつくことにするか。
携帯をその辺に投げ捨て、私は布団をかぶった。

プルルルル―…

が、またもや、空気を読まない私の携帯、もといミツオ君からの電話が鳴り響いた。
ああもう、次に会ったら殺す。絶対に殺す。


『もしもし忍?悪いな、名前載せていなくて』

「悪いと思うのなら今すぐ死ね。死なないなら殺しに行く」

『え?は、ちょ、ちょっと何でそんなに殺気立ってんだよ』

「自分の胸に手を当てて聞いてみな!これ以上喋んなマジで殺す」


ブツンッ。

私は言いたいことを言って電源を切った。
ああまで言ったから流石にもう電話はかかってくることは無いでしょう。あったとしてもメールだろうし。さっき喋るなって言ったから。
まあ、何でも良いや。
私は二度寝の幸せなひと時を味わうことにしますよ。ええ。

プルルルル―…


「人の話聞いてたか!?ああ!?」


喋んなって言ったのにどうしてまた電話をかけてくる!?


『いや、だって、あんなに怒られている意味が分からないからさ』

「今何時だと思ってんだ!?朝の7時だぞ!?ミツオ君みたいに早起きなんてしねーんだよ!もうかけてくんな!」


ブツンッ。

乱暴に電源ボタンを押して、それから長押しした。
電源さえ切っていれば奴からの電話で至福のひと時を邪魔されずに済むだろうという私にナイスな考え。


ピンポーン―…


…なんかインターフォンが鳴った気がするんですけど。
いや、きっとあれだよ。近所の人が回覧板を届けに来てくれたとか、「今日、溝を掃除する日ですよ〜」って近所の人が親切に教えに来てくれたとかだよ。あ、勿論私がするわけじゃないよ?父親がしにいくんだよ。一応説明しておくとね。
…ま、まさかミツオ君じゃないよね。流石に家にまで来ないよね。
嫌な予感がしながらも私は頭から布団をかぶった。


「忍ー?ミツオ君が来たわよー?」


嫌な予感が的中してしまった…!
…いや、待てよ。ここは狸寝入りしたらいいんじゃないか?母親は1階から2階に居る私に呼びかけたのだから、私が返事しなければ起きていないと思うだろうし。うん、そうしよう。
母親には申し訳ない、と思いながらも私は彼女の呼びかけを無視することにした。


「忍ー?寝ているのー?」


そう、私は寝ているのです。
お願いだからお母さん。そのミツオ君とやらを追い払ってはくれませぬか。私は眠いのです。寝たいのです。


「あら、寝ているのかしら…」


困ったわね、と言わんばかりの声のお母さん。
ごめんねお母さん。私も色んな意味で困っているのです。


『ごめんなさいねミツオ君。折角来てくれたのに』


いいぞお母さん!そのまま奴を追い出してくれ!


『気にしないでください。俺が突然来たのが悪いのですから』

『そんなことないわ!折角昔からのお友達が遊びにいらしたのに起きてない忍が悪いのよ』


なんでそうなる。お母さん、奴のペースにのまれないでくれ…!
私は布団の中で祈るばかりだ。


『ところでミツオ君。朝ごはんはもう食べたかしら?良ければ食べてって』

『え?良いんですか?ありがとうございます!』


ありがとうございます、じゃねぇええ!
つーか、お母さんもお母さんで何が「良ければ食べてって」だよ!?何でウェルカム状態なんだよ!


『良いのよ良いのよ。私、久々にミツオ君に会えて嬉しいんだから。ふふふ』

『俺もですよ。おばさんの手料理食べるの久々で楽しみです』

「いい加減にしろぉぉおお!」


二人の会話を聞いていられなくて、階段を2歩で飛び降りた(※普通に危険です)


「まあ忍ったら!パジャマのままで出てくるなんてはしたないわよ」

「全てはコイツが悪いんだ!コイツが」


ビシッとミツオ君を指すと、彼は「え、俺ぇ?」と驚いている。何で驚くんだ。


「人を指さしちゃいけないってあれほど言っているでしょう」

「だったらそうせざるを得なくなった張本人をどうにかしてくれ!」

「お母さん、忍にそうさせようと思ってやったわけじゃないのに―…」

「お母さんじゃなくてコイツだ!」


何だ!?ここはボケしかいないのか!?誰かツッコミ担当を派遣してくれ!


「さっきから聞いていれば忍さ、おばさんに向かってなんて口を利いているんだ。おばさんは忍のことを思って―…」

「アンタがそれを言うのはおかしいってことにまず気付こうよ」


はあ、もう。
朝っぱらから疲れさせないでくれよ、と私は額に手を覆った。


「もう朝ごはんでも何でもいいから食べたら帰ってくれ…。私はもうひと眠りすることにする」

「折角ミツオ君が来てくれたんだから忍も起きときなさいよ」

「私は昨日のテストで疲れてんだ!」

「俺と睡眠どっちが大事なんだよ!」

「睡眠」

「ひどいっ!」


うう、あんまりだよ、と泣き真似をするミツオ君。
いやあね、そうは言ってもだよ。睡眠には敵いませんよ。


「お母さん、忍をそんな子に育てた覚えはないわよ!」

「ああ、そうですか。私は自分の母親がそんな母親だったことに頭を抱えなくてはいけなくなるんですね」

「テストとミツオ君どっちが大事なのよ!?」

「テストに決まってんじゃないか」


母親が言うセリフじゃないよね?これどういうことだ。


「お母さんね、勉強よりももっと大事なことがあるんじゃないのかなって思うのよ」

「へー、例えば?」

「ミツオ君」

「お母さんはそんなにミツオ君が好きなのか。だったらミツオ君と結婚すればいいじゃないの」

「ごめんなさいねミツオ君。忍、根は良い子なんだけどね、素直じゃないのよ」

「大丈夫です。分かってます。忍はああ言っても俺のことが好きだって分かってますから」

「お前は何も分かってない」


頼むからこれ以上ややこしくしないでくれ!


「ミツオ君さえよければいつでもこの子あげるわよ。うふふ」

「うふふじゃないからね、お母さんも」

「こちらこそこんな俺で良いのならいつでも!」

「もう喋るなぁぁああ!!」


一体この会話は何処で収束するんだろうか。
もう手を付けられなくなったため私は大きなため息をつきながら自分の部屋に戻った。





日本語を勉強してこい

忍、あそぼーっ!
部屋に入って来んな!





++++++++++++++++++++++++++
後書き

最初に一言。
ごめんなさい…!(土下座)
結局何がしたかったのか分からなくなりました←
ミツオ君がバカ過ぎて反省。

次はヒロインのことが好き過ぎるミツオ君でも書こうかな←
(2012.05.07)
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