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突撃訪問しよう



「練習試合?」
「…ああ」

部活前、武ちゃんから告げられた試合予定。私に負けてから以前より練習には参加している黄瀬を加えて、その練習試合で調整をしようと考えているようで…。
相手に失礼じゃんそれ。バスケ大好きなのは知ってるし海常のために色々としてくれているけど、そういうのはやめてほしいよ…。
小さく武ちゃんにバレないようにため息をこぼして対戦校を尋ねる。その返答に返ってきたのは東京の誠凛高校という所。
…ん?誠凛高校?

「とにかく、練習試合があるって事を笠松達に伝えておけ。いいな」
「…イエッサー」

もしかしたら知り合いの居る学校のような気がして私は明日会いに行こうかな、なんて考えながら返事をしてその場を後にした。



「あ?練習試合だ?」

部活前。ストレッチしている幸男に武ちゃんと話した事を言うと、顔を顰めてそう返ってきた。ちなみに黄瀬はまだ来てない。
なにをしてんだあの馬鹿は…。なんてイラッとしながらも、幸男に肯定の意味で頷く。

「で、何処とだ?」
「東京の誠凛高校」
「あー…確か、去年の予選で決勝リーグまで行った学校か?」
「そうだよ。1年生だけで」
「そこと今度試合?どういう風の吹き回しだ?」
「あっちから申し込まれたみたいだけど、ただの調整程度にしか考えてないみたい、武ちゃん」
「その愛称どうにかしろ。…また監督は、」
「それで、明日誠凛行くから放課後休むねー。以上、報告終了」
「おー、分かっ…はぁ!!?」

軽く流そうとしたみたいだけど、そうは問屋が卸さないみたいだった。「おいこら待て仁王!」と若干起こり気味に言う幸男の言葉を無視して、私は自分の仕事に取り掛かった。
だって久しぶりにあの子たちに会えると思うと嬉しくて。
小さく笑い準備をしていると、黄瀬がのんびりとやって来た。

「ちーっす」
「おせーぞ、黄瀬!!」
「すいませんッス!」
「黄瀬、校庭20周。行け」
「えぇ!?」

のんきに挨拶する黄瀬にイラッとして私は思わずそんな事を言った。黄瀬はショックというか、なんでそんなメンドーなことを…的な目をしていてそれがまたイラッとさせるもので…。

「だったら校庭50周。それでも行かないなら、部活が終わるまで校庭を走らせてあげるよ」
「いいいい今すぐ行くッス!!」

脅しが効いたようで、黄瀬は慌ててグラウンドへと向かって行った。

「お前、流石にないぞあれは…」
「部活を真面目に取り組まない奴はあれで充分。幸男だって苛々してたじゃん」
「……」

否定できない幸男だった。



次の日。私は誠凛へと赴いた。ちゃんと武ちゃんにも許可(無断)をとって学校から直接向かった。

「あー、此処が誠凛ー。流石新設校、綺麗っスねー」
「…なんで、アンタもいるのよ。…黄瀬」

何故か黄瀬と共に。
待って。私、幸男以外には言ってないつもりなんだけど。

「お前は戻って練習しろ。ただでさえウザいのになんで一緒に行動しなくちゃならないのよ」
「ひどいっスよ、楓先輩!そんなつれないこと言わないで下さいっスよ〜」
「無理。幸男ならともかく…」
「ホント、楓先輩は笠松センパイ一筋っスね…」

黄瀬の言葉に私は足を止めた。だって、その言い方はまるで、

「私の悪口を言うなら構わない。けど、」

それは幸男を馬鹿にしているように聞こえた。

「幸男の悪口を言うんだったら、私は許さないよ」
「っ…」

私の覇気に息を呑む黄瀬。小さく「すいませんッス」という謝罪の言葉が聞こえたから良しとしよう。
固まる黄瀬を放置して、私はさっさと体育館へと向かった。体育館からはキュッキュとバッシュの摩擦音が聞こえ、ボールが弾む音がしていた。こっちもまた楽しそうにバスケをしてるなぁ、なんて思いながら屋内シューズに履き替えて中に入った。

「やってるやってる」

去年見かけた誠凛バスケ部主将の日向や伊月、水戸部や小金井もおった。けど何故か誠凛の監督であるリコが見られない。可笑しいな、なんて思っていると後ろから気配が。振り向けばそこには軽く息を弾ませている黄瀬の姿。

「…ちょっと、此処までくるだけで息切れとか。体力落ちた?明日から黄瀬だけメニュー五倍にしてあげるよ」
「ひ、酷いっスよ先輩!これでも早く来た方っス!」
「はいはい。それより黙って。向こうは大事な話をしそうなんだから」
「?」

丁度練習風景を見れば、水戸部と同じ背丈の少年が伊月をかわしてダンクを決めていた。黄瀬とそう変わらない体格の持ち主だな。けど、ダンクが一番って感じのプレーからして、派手好きって事かな?

「(それと…)」

チラリと横を見れば口を弧を描かせている黄瀬の姿が。どうやら黄瀬は、さっきのプレーを模倣したみたいだった。
あとで馬鹿やらないといいんだけど…。

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