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一人より



「結局ズルズル離されて前半終了かよー」
「てか終わりだろ。もう帰ろーぜー」

前半が終了し、選手達が控室に戻る中観客席ではそがな声が聞こえた。その声に反応して黄瀬は溜息を溢して言った。

「っも〜…根性見せろよ誠凛〜!!」
「見せてるよバカ。あんだけ力の差見せつけられてまだギリギリでもテンションつないでんだ、むしろ褒めるぜ」
「きっと、正邦が秀徳とやっても展開は一緒よ」

“キセキの世代”緑間真太郎、彼もまた天才ね。つい、関心しているとカシャン、と何かが落ちた音がした。気になって黄瀬を見たら、どうやら音楽プレーヤーを落としたみたい。それからは今日のおは朝占いに関して流れていた。

「黄瀬、それ毎日聞いてるの?」
「いや、たまたまっス」

占い好きなら笑おうと思ったのに…。少し残念がっていると、第3Qが始まった。誠凛を見れば、黒子がベンチにいた。

「あれ…?黒子っちベンチスか?」
「まぁ…高尾がいる限りはしょーがねーだろ」
「にしても無策っつーか…」
「それも仕方ないわ。正攻法では敵わない…、かといって奇策みたいななもんは勝負事にするのがポイント。でも、それもない」
「何か突破口でもあればいいんスけどねー」

黄瀬もやはりそう思うんか呟いた。試合はすでにジャンプボールをし終わって、緑間にボールが渡されていた。すぐに3Pを打とうとした緑間の前に…、

「!」
「火神っち!?」
「(あの跳躍力…)」

ボールに当たることはなかったが、何かを感じたソレ。
しかもそれは一度だけじゃなく、二回目、三回目と跳びそれは回数を重ねる毎に高くなっていった。

「黄瀬との最後のアリウープで見せた片鱗が今でるんか…」
「“キセキの世代”と渡り合える力。そして、バスケにおいて最も大きな武器の一つ…。あいつの秘められた才能…、それはつまり…」

高尾から渡されたボールをタメの短い場所からの3Pを放とうとした緑間のシュートをカットしたのは…

「火神っち…!」

天賦の跳躍力を秘めた火神だった。
なんとか突破口を見つけた誠凛。けど、何か誠凛の中で違和感が生まれていた。火神の様子が、可笑しい。

「……幸男」
「あぁ。火神の奴、独走しているな」

幸男も分かってるようで、何やってるんだ。とでも言いたげな表情をしていた。何を思ってるのかは分からないが、自分の実力をだいたい理解してるなら誰もは必ず思う。

「自分の力しか、信じとらんな」

秀徳の宮地のボールをカットしてそのまま木村とジャンプ勝負して点を入れる。かなり一人でやってるけど、

「…そろそろ時間切れね」

いいかけた時、火神は飛ぶことが出来なかった。

「え?どうしたんスか、火神っち…」
「ガス欠よ」
「ガス欠!?」
「…多分ね。おそらく火神はまだ常時にあの高さで跳べるほど体ができてない。それを乱発して孤軍奮闘してたからな。しかも、」
「途中交代したとは言え2試合目。加えて、正邦の津川のマークで削られてたからな…」
「今響いてどーするの…。なーんかガッカリね」

呆れる私と幸男。黄瀬もなんとも言えん表情をしてた。けど火神だけじゃなくて、ガス欠なのは日向達も同じだろう。そんな中、一人で突っ走る火神はただのアホだ。

「黄瀬」
「?はいっス」
「アンタが火神みたいなことしたら即引っ込ませるから」
「さ、流石にあんなこと俺しないッスよ…。ねぇ笠松先輩?」
「あぁ。楓、もしもの時は頼むわ」
「笠松先輩!?」

幸男の言葉に驚く黄瀬。そのまま「酷いッス〜」と泣く黄瀬。その様子に私は小さく笑う。そんなことをしとる間にいつの間にか第3Qは終わってインターバル。誠凛のほうは揉めていた。
火神は自分の力を過信していた。

「…先輩」
「なんだ?」
「もし、俺が火神っちみたいなこと言ったら先輩達は…」
「「フルボッコ」」
「えぇ!!?」

自分から聞いたクセに、黄瀬はショックを受ける。

「先輩に向かって何様よ、とか言ってたぶん殴る」
「肩パンする」
「こ、怖いッス…!!」

怖がる黄瀬に幸男と笑い合って「冗談よ」とは言う。でも、本当にそうなったらそれなりの対策はさせてもらう。
五人でするほうが強いに決まってるんだから。

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