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先輩達の意地



「(秀徳は相変わらず調子良いみたいだね…)」

ちらり、と隣のコートで3Pを放つ緑間を見て私は思った。秀徳は絶対に勝つのは確信をもって言える。自信過剰はどうかと思うけど、まぁ、“王者”を名乗っているなら勝つことは必勝になる。だって雅治達がそうだから。

「…緑間っちの方はヨユーみたいっスね」
「ま、当然だろ。相手もフツーの中堅校だし波乱はまずねーだろ。あるとすればコッチ…なんだが…」

幸男が言ったと同時にホイッスルが鳴る。

「ファウル!白10番」
「火神っちの得点で誠凛もエンジンかかったと思ったんスけどあと一歩うまくいかないっスねー」
「いくらなんでもDFだけじゃ王者名乗れねーよ、OFだって並じゃねー」
「ふーん」
「…確かに正邦相手に黄瀬や火神みたいな天才型のスコアラーはいない。でも、タイプが違うだけでOFにもDFにも古武術を応用してる」
「特に三年ともなれば相当のレベルで使いこなしている。正邦は天才のいるチームじゃねー。達人のいるチームなんだよ」
「……達人ならいるっスよ、誠凛にも」

私と幸男の言葉に黄瀬は頬杖をつきながら意味深げに笑みを溢して言った。
そしてすぐにその理由は分かった。

「ホント、あのミスディレクションはどうやっても再現するのは難しいかもね…」
「…なるほど、黒子が間に入ってパスの中継をしたってか」
「いくら鉄壁の正邦DFも壁の内側からパスをくらったことはないみたいっスね」
「なんで黄瀬がドヤ顔するのよ」

黄瀬が自分のことのようにドヤ顔しとるからツッコミを入れてしまった。日向が放った3Pが決まったと同時に第1Q終了した。
誠凛、正邦どちらとも第2Qの作戦を考える。この様子じゃあ、第2Qからは第1Q以上に白熱した展開になりそうだな。誠凛と正邦の様子からそんな事を考えた。

≪第2Q始めます≫
「あ、始まるみたいっスよ」
「あぁ」

館内に鳴り響くブザー音。第2Qの開始が告げられ、どちらもコート内に入り、すぐに始まった。ゆっくり様子見でもするのかな、と思ったけど正邦は違っていたようで伊月と火神にマークしてる春日と津川がそれぞれに対してかなりの圧力をかけた。

「(岩村の奴、ようやく誠凛を格下扱いしなくなったのかな…)」

圧力といい、それぞれマークする相手に油断も隙も与えない正邦にそんな事を思った。

「やっぱ津川のDFは凄いねー。1on1だったら抜くことは出来ないくらいよくできてる」

けど二人がかりならどうなのかな。
火神もそれは考えていたようで、津川の股の間から黒子にパスを出しすぐに黒子は火神に戻した。けどすぐに岩村がヘルプに入った。が、それも火神と黒子の連携プレーで抜くことが出来、見事一点を取った。

「前より二人の連係の息があってるっスね」
「あのDFをぶちやぶるかよ…」
「…けど、気になることがあるね」

私と幸男は自然と火神に視線を向けた。

「ああ。第2Qでかく汗の量じゃねーよ、あれは…」

津川のDFによって思うようにプレーできない火神。思うようにプレーが出来ないって事は、それなりのストレスが生まれる。落ち着かないままプレーをすれば、体力消耗の原因にもなる。

「それに、津川も何か企んでるみたいに見える…」

春日と話す津川に嫌な胸騒ぎが。黄瀬の話や去年の事を思い出すと、津川にマークされた選手はファウルを数回取られたりしている。
そろそろ何かを仕掛けてくる。

「変だな…津川がまったく火神に圧力をかけてねー…」
「…」

幸男がそう呟く。確かに津川はさっきと違い圧力をかけていない。

「不調…っスか?」
「いや…違う、」
「だめだ行くな火神!!」

日向の言葉と同時に、火神は津川の罠に嵌ってしまい見事四つ目のファウルを取った。

「バッカ…!!何やってんスかもー」
「こりゃひっこめるしかねーな、残り一つじゃビビってまともにプレイできねー」
「はーっ…バッカたれ…」
「一言言わせて貰うけど、黄瀬。アンタもこうなると思う」
「ええ!?ちょ、酷いっスよ!」
「中学の時と同じ過ちを繰り返すと思う、黄瀬って」

メソメソと泣く黄瀬を無視し、誠凛はどうするのかと様子を見ると火神と黒子を交代させた。コートに入ったのは土田と小金井。二年生だけのメンバーに私は懐かしく感じた。

「?(久し振り…?)」

黒子までも交代したのはミスディレクションの効果が薄くなったからで、火神を交代させた理由も分かった。懐かしく感じたのは何故かと思ったけど、彼らの姿が去年のIH予選と重なった。

「(なるほど。リベンジ、みたいなものか)」

去年の雪辱戦に一年を頼るとか、二年生のプライドもたまったものじゃない。

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