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「…どうなの、これ」
文化祭当日、生徒会室に行く前に教室に来てくれとクラスメイトたちに言われていた俺は、れんちゃんと一緒に教室に向かった。
中に入った途端、俺はクラスの衣装係の子たちに教室の奥に引っ張られてあれよこれよという間に見事に変身させられた。
「やっぱり元がいいとやりがいありますねっ」
クラスメイトが期待の眼差しで見ている中に一歩踏み出すと、どこからともなく歓声が聞こえてきて、それを聞いた衣装係の子が満足げに頷いた。
「よく似合ってるぜ、のん」
「何かこれ普通のコスプレより恥ずかしいんだけどお、」
「いいじゃねーか。むさ苦しい男子校に紅一点って感じで」
みんなが遠巻きで見ている中、唯一俺に近づいてきたれんちゃんはこれまた楽しそうに笑みを浮かべながら俺の頭に手を置いた。
「お前こんなに髪伸びてねーよな?」
「んー、何か被せられた」
「笹原さまの髪色と全くそっくりのウィッグを特注したんです!」
今の俺の格好はといえば、簡単に言えばうちの学校の制服をそのまま女子仕様にしたものを着ているのだ。
俺の元の髪色である黄色に近い茶髪と同じ色の内巻きセミロングのウィッグを被され、軽く化粧もされた。
服はカッターシャツとネクタイはそのままで、制服のズボンと同じ生地で作られているであろうスカートは膝上丈で、腰に白のカーディガンを巻かされ、紺のニーハイソックスにローファー。自分で言うのも何だが、どっからどう見ても女子になっていると思われる。
「こりゃ、あいつらの餌食決定だな」
「…考えないようにしてたのに!」
「氷雨が迎えに来てくれるんだろ。そろそろ生徒会室行けよ」
「そうだった」
「おーい、のん。迎えに来たぞ…」
今日来る奴等のことを考えると今すぐ着替えたいのだが、せっかく用意してくれたのを無下にできるわけもなく、俺は考えるのを止めた。
するとタイミングよくやって来たひーくんが教室に顔を覗かせて俺を視界に捕らえて固まった。
そして同じようにひーくんを視界に捕らえた俺のれんちゃんも固まった。
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