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「ジョーカーの言ってたのマジだったんだな!」
「ほんとにキティかよ!?」
「最後に会ったのは二年くらい前か?」
涼くんの言葉にtrampに創設当初からいるメンバーたちは懐かしそうに俺に話しかけてきて、俺を囲んでいる。
「あれがキティさんかよ」
「素顔すっげぇ美人なんだろ」
「フード脱いでくれねぇかなぁ」
「本物見れるとか…!」
そして新参メンバーたちは囲まれている俺を遠巻きに見ながらなにやら話しているのだが、囲まれている俺には聞こえない。
「キティ、おかえり」
「わ、…ふふ、くすぐったいよー」
創設当初からいる古参メンバーは十数人くらいで、ほとんどが俺より年上だ。だから昔から自分でも自覚するくらい子ども扱いされいて、今もみんなが順番にフードに隠れた頬や額やらに器用に軽くキスをしてくる。
それはくすぐったいのだがここに受け入れられている気がして心地よく、俺はこの行為が結構好きだったりする。
「愛されとるね、子猫ちゃんは」
「あいつらにとっても弟みたいなもんだからな、キティは」
「キティもこことメンバーが大好きだからね」
「お人好しのあほだからな」
「ま、幸せそうだしいいんじゃねえの」
のんの様子を離れたところから眺めているのは、涼、時雨、氷雨、洋平、廉ノ介の五人だ。
五人ともそれぞれ多種多様な反応をしながらも微笑ましそうに真ん中にいるのんを見ている。
「ジョーカーさん!」
「ん?どないしたん?」
すると一人の男がジョーカーである涼に声をかけてきた。彼のことをさん付けで呼ぶということは新参だろう。そうでなくても、古参のメンバーの顔は覚えているため見覚えのない彼は確実に新参だ。
「キティ、さんって素顔見せないんですか?」
「あいつの顔見てぇのか?」
そんな彼の質問に眉間にシワを寄せて口を開いたのはジャックこと時雨だ。
男は機嫌の悪そうな時雨に少し怯んだが言葉を続けた。
「古参のメンバーは知ってるようですし…美人だって噂も、」
「悪いけど最近入ってきたばっかりの君たちにキティだけじゃなくて、俺たちの素顔を見せるわけにはいかないかな」
「俺らも平和な環境で生きてるわけじゃねえしな」
話に入ってきたクイーンとエース、洋平と廉ノ介の言葉に彼は落胆して輪の中に戻っていった。
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