ごろごろ、と転がる。

ぐるぐると視界は変化する。

ごろごろ、ぐるぐる、くらくらころころきらきらがらがらがんがんぎらぎらじんじんかんかんさらさらどんどんひらひらふわふわ



猫っ毛の彼の顔を下からじっと見つめた。
ぼぅ、っと何をするでもなく、私に膝枕を提供していた彼はなかなか気づかない。
仕方なく彼の服を引っ張った。
びくり、と彼の肩が大袈裟に揺れて、やっとその綺麗な碧の瞳に私を映す。
ぱちぱちと睫が触れ合って、そこに戸惑いの表情をのせる彼は卑怯だ。

「……暑い」

だって、私よりも彼の方が幾分も色っぽい。

「…なら、くっつかなければいいだろ?」
「それはいや〜」
「ワガママ」

ぺしり、と彼が私の額を叩いた。
けれど、彼は怒っている様子ではなく、どちらかといえば嬉しそうだった。
うふふ、と気持ち悪い笑いを零せば、彼はなんだよと嬉しそうに言う。


「クラサメの手冷たい」
「そうか?」
「冷たいよ。気持ちいい…」

優しく、頭を撫でられる。慈しむその仕草に胸が熱くなった。表情だってほら。
片足を上げて、大袈裟に上体を起こす。
彼は、たまもやぱちぱちと睫を触れ合わせてから私を見た。

「暑い…!」
「あぁ…暑いけど……?」


とけちゃいそうなのは夏のせいかしら




「……冷たくて美味しいもの?」
「冷たくて美味しいものだよ」

ちゅるちゅると私は麺を啜る。
暑さに耐えかねた私は、彼と少し早めの晩御飯を食べることにして外に出た。

「確かに、冷たいし美味しいけど……蕎麦って」
「可愛くないチョイスでごめんなさいね」

彼は、蕎麦を箸でつかんだままぶつぶつと言う。(因みに私は、蕎麦屋に入ったけれど冷たいうどんを頼んだ。蕎麦は温かいのが好みなのである。)

「まぁ…可愛くはないな」
「……うるさいなぁ。美味しいからいいでしょ」
「はいはい」
「……啜れる?」
「そんな心配はいらない」

実はうどんが大好きな私は、蕎麦を啜れなかったりする。日本人だけど。
じ、と彼を見つめてみれば、睨まれた。彼は、食べるところを見られるのを恥ずかしがるところがあるのだ。
加虐心を軽く煽られて、顔を近づければ額に手刀が飛んできた。

「早く食べろ」
「食べてる食べてる」
ちゅるちゅるめきゅめきゅ、と麺を啜って咀嚼する。
真面目に食事をすることにして、暫く無言になった。
私より早く食べ終えてしまった彼を、ちらりと見ながら、ふと思い出した。

「…昨日、七夕だったね」

ん?、と彼が水を飲みながら、私を見た。

「そういえば私、一昨日甥っ子と短冊に願い事書いたの」
「へぇ……何て書いたんだ?」

気になるというよりは、早く終わらせろと言っているように感じて、私は苦笑いしてしまう。
そして私は、やっと最後の一口を食べ終えた。


「私、
“世界一可愛いお嫁さんになれますように”
って…書いたの」




140708    
現代社会人設定。本当は間に合わせたかった七夕のお話。

ねお


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