「ねぇ…アギトって本当になれるの?」
最近仲良くなった、傍らの少女が唐突にそう言った。僕は、読んでいた本から目を逸らし、彼女を向く。
ふわり、と柔らかな風が髪の毛を撫でていった。
「…なりたいのか?」
僕がそう言えば、彼女はつまらなそうに言った。
「別にー」
そう言った彼女は、僕の手元からさっきまで読んでいた本を奪う。
そして、ぱらぱらと頁を捲った後、そっと顔を覗かせた。

「曲がりなりにも“候補生”だし?
救いたい命は救いたいと思うだけだよ。ねぇ、エースはそういうのないの??」
ひらり、と今度は彼女の水色のマントが揺れた。
「僕は…言われたままにするだけだ」
僕にはまだ、あまり分からない感情だから。あくまで、マザーの為に耐えてきたからー…。
「…じゃあ、さ。もし、今いきなり白虎の奴らが攻め込んできたら、エースはどうするの?軍令部なんかと連絡つかなくなったら…エースは何するの?」
ぴっ、と僕に指先を向けて、彼女は問う。
「…何をするんだろうな、僕は。でも、きっと…きっと、守ってみせるさ。君も、仲間も…朱雀も」
僕がそう言うと、彼女は本を閉じて
   嬉しそうに笑った。

笑った彼女の姿に、一瞬誰かを見た気がした。


君の笑顔に胸が締め付けられた

何度も繰り返してきた会話。


130217  ねお

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