「あ、雨。」

学校を出るまでは気付かなかった。
そういえば今日は遅れそうになって天気予報なんて見てる暇なかった。
朝は晴れてたくせに、空気読めよ。
心の中で悪態をつきながらも空は雨のままで。
これではスケボーだって意味が無い。乗って転んだりでもしたら大変だ。
仕方ないが濡れて帰るしかなかった。
先輩たちが補習で遅れるので待つ約束をしていた気もするけど、
そんなことすっかり忘れていた。


学校から少し歩いたところに、人影があった。
雨の中動くことも無く、ただずっと立ち続ける少女。
ただ彼女の長くて澄んだ蒼には見覚えがあった。

「しょう・・・こ、さん?」
「・・・、」

本人と話したことがあるわけではないが、アリスのクラスの女子のハズだ。
何度か話してるのを見たことがある。

「どうしたんですか?こんなところで突っ立っていたら風邪、ひきますよ。」
「平気。」
「いや、でも・・・。」

現に彼女は全身ずぶ濡れで見てるこっちが寒くなるぐらいだ。
今さっき濡れながら歩いてきた自分が言えることではないが。

「やむわ、」
「・・・、は?」
「やむ。」

俺の顔はきっと間抜け面だっただろう。
彼女がそういったあと雨がやみ始めて、太陽が出てきた。
俺は何が起こったのか、理解など出来てはいなかった。

「あなたが、」
「はい?」
「あなたが、寒そうだと思ったから。」

まるでそれは自分で雨を降らせていたかのような。


「あと、これは特別。心配してくれてありがとう。」


そういった彼女はあんなにもずぶ濡れだったというのにどこも濡れていなくて。
不思議に思っていると彼女はもういなかった。
よく見てみたらどこも濡れてない。自分の服も、道路も、俺自身も。

まるで最初から何もなかったかのように。


とりあえず明日、硝子さんのクラスに行ってみよう。
そしてとりあえず御礼をして、話も聞いてみよかな。
爽快にスケボーに乗りながらそんなことを考えてみた。
きっといつもよりスピードが出ていただろう。

補習の先輩たちのことを思い出したのは家に着いてからだった。


曖昧なコバルトブルー
(彼女が微笑んだのは気のせいだろうか)
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