日向についての思考をひとつ。
俺は日向が大好きだ。日向も俺を大好きだと思う。
でもそこに大きな壁があることに気づいてしまったんだ。

「ラブとライク。この差は目では見えにくく、しかし途方もない壁である。」

俺の好きはラブだけど、日向の好きはライクなのだ。
きっとこの壁を壊す方法はいくらでもある。
ハグなりキスなり、セックスなり。

「でも俺にはそのことによって壁を壊すだけじゃなく新しく俺達の関係に壁を作ってしまうんじゃないかと思っている。俺にはそれが、怖い」

酷く臆病なのだ。自分は。
いつだってなにをするにもまわりへのことを考えないと出来ない。
なにかをするために他のことを犠牲する可能性を拭えない。
だからなのだろう。

だからいつも自分のしたいように出来ないのだ。


(自己嫌悪、じゃあないけど好きになれる性格じゃないな)


「自分の性格をどうこうしたいわけじゃない。でもこんなんだからどうにもなってない。どうすればいいんだろうな。」

そうやって俺は笑う。自嘲気味だったろうか。
目の前の木吉がいつものように何考えてるかわからないような顔でこちらを見ている。

ごめんな、木吉も日向が好きなんだろう?知ってるよ。見えてたから。

別に協力しろとか諦めてくれとか言わないよ。
ただひとつだけお願いしていいか?


「お願いだから奪わないで」


梔子、じゃあない
(幸せにさせない幸せになれない幸せがない)
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