キセキの世代にならなくてよかったな、と俺高尾和成は思う。
黒子は例外として俺はキセキの世代の強さが怖いのだ。
妬みとはまた違う。その才能を妬ましいとは思えないし羨ましいなんて以ての外だ。
ただ、その強さが愛おしいとは思う。
「真ちゃん、質問いい?」
「なんだ」
「あのさあ」
なんでキセキの世代はそんなに強いの?
真ちゃんが珍しく驚いている。ふうん、考えたこともなかったのかね。
強くて当たり前なんだろう。それが当然なのだろう。
(緑間の場合は人事を尽くした結果、なんだろうけど)
実際はそんなに関係ないんだぜ、きっと。
だって努力(緑間風に言えば人事なのだろうけど)しなくてもキセキの世代の強さはズバ抜けているしたとえ凡人が努力をいくらしてもキセキの世代には到底適わない。
だからキセキの世代は特別なんだと、それは奇跡なんだとこいつらは理解するべきだ。
特別であるからこそ価値があると自覚しろ。
「緑間、お前はひとつ大きな勘違いをしている。しかもそれはとても大きな勘違いだ。お前の言う人事を尽くすというのはたしかにそうかもしれない。努力は人を強くするには重要だ。でもだ、努力しなくても人は強くなれるんだ。」
たとえば俺の目みたいに、
「お前のその実力はたしかに人事を尽くした結果だろうけどそれ以上にお前は天才なんだよ。努力しようがしまいがお前はキセキの世代になれたんだよ。それだけの才能がある。それを勘違いしちゃいけない」
俺はそう言って目を細くして笑った。緑間の顔は見ない。笑ってないから。
「安心してよ、真ちゃん。お前がなんと思おうと俺は緑間真太郎が好きだから。たしかにその強さは怖いとすら思う。でも俺は怖さをひっくるめて緑間の強さを才能をプライドを信念をすべて愛しているから」
ね?と今度は満面の笑みを作ってやる。
「じゃあ俺からも質問があるのだよ」
「なあに真ちゃん」
お前は俺がキセキの世代じゃなかったら俺のことを好きじゃなかったのか?
笑みが崩れた。
お前を怖いと思いながらも好きでいるのに。こうはなりたくないと思いながらも愛しているのに。
俺が黒子を嫌いな理由も緑間が好きな理由もわかってるの?俺は凡人だから緑間のような強さはないんだって。黒子のように強くないのに隣を歩くなんて出来ないって。ねえ、わかってる?お前は強いからこその緑間真太郎なのに。
「うん」
ああ、こんなところで緑間を嫌いになる可能性を出されるなんて。
傷口にアロンアルファ
(その傷をまた強さで閉じてしまえばいい)(どちらの傷かは知らないまま)