「真ちゃん、ねぇ。真ちゃん」

俺は君から逃げない、よ?

「真ちゃんってば、いつまで過去を引きずる気なのさ」
「・・・は?」
「誤魔化すなよ、俺にだけは嘘つくなよ、俺を騙せると思うなよ」

高尾が珍しく真面目で、さながら獲物を狩る鷹のようだ。
(いつもはおちゃらけている高尾が、だ!)

「黒子君・・・、でしょ?幻の6人目。

 いつまであのころの夢を見ているつもり?」

「だから何の話なのだよ」
「誤魔化すなって言っただろ。真ちゃん、いっつも目で追ってるよ?

俺を見てるときなんて特に。

黒子君とは相性が悪いだなんてそうかもしれないけど。でもさ、忘れられないんじゃないの?

黒子君のことが。

今でも黒子君を見つけようとしてるんじゃないの?ねぇ、   違う?」

コイツは何を言っているんだ?
コイツは何処まで知っているんだ?
コイツは、コイツは、コイツは、コイツは、コイツは、コイツは、コイツは、コイツは、

何処まで言ってしまうんだ?

「でもさ、黒子君は真ちゃん、真ちゃん達から逃げたんでしょ?
逃げた結果、新しい光を見つけたんでしょ?違うの?そうでしょ?」

あぁ、コイツは―

「結局のところ、真ちゃんは黒子君のことを見つけられなかったんでしょ」

あぁ、コイツは―!

ガダンッ、と音を立てて高尾がロッカーに叩きつけられた。
俺が高尾を襟元を掴んで叩きつけたからだが。

「真ちゃん駄目だよ、真ちゃんの手でも怪我したらどうするのさ。
俺なんかを痛めつけるためだけに怪我なんてしちゃ駄目でしょ?」

高尾は自分には何事も無かったかのように俺の心配をしてくる。
それが酷く怖く見えて、 手を離した。

「真ちゃん、ねぇ。真ちゃん」
「黒子君を見る必要なんてもうないんだよ、だってもう彼は居ないんだもの。
彼の代わりになれというのならいくらでもなってあげるから、

だから俺を見なよ。

黒子君にはなれないけど、代わりにならなれるよ。きっと。
俺だったら見つけられるでしょ?
俺は逃げないから、絶対に逃げないから、裏切られたとしても逃げたりしないから、


俺だけを見続けていて、よ」


それは束縛にも似ていた
(本当は俺が逃げられないだけ)
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