綺麗な見た目、だとは思う。
長い睫毛。
スッとしている鼻筋。
薄くやわらかそうな唇。
見た目に反してさわり心地のいい髪。
パーツはもちろん顔のバランスだっていい。身体だってバスケをやってるだけあって高身長だし筋肉も程好くついている。
顔から身体から何から何まで綺麗だ。こうやって見るとやっぱりモデルなんだなあって思わされる。
でも見た目だけ。
きっとこう言うとだいたいの人は否定すると思う。
見た目と一緒で明るいし、よく笑うしよく泣く。人懐っこいし、どんな人とでも仲良くなれる。
充分すぎるほど人に好かれる性格だけど。でもさ、それ。所詮作り物だろ?
現に今ここにいる作っていないこいつを見てそんなこと言えるやつがどれだけいるんだろう。
「高尾っちねえ、俺が何をしたっていうんスか」
俺に抱きついて俺に泣き言を言って俺以外の彼に涙を流し憎悪と愛情を吐いて。
「俺、みんなに好かれるように頑張ったッスよ。ねえ、ねえ、なんで、振り向いてくれないんスか、勝てないんスよ、どうしたって、火神っちに、黒子っち、ねぇ、」
綺麗な顔だって台無しにして、
普段の面影をすべて捨てて、
俺だけに見せてくれるそんな素顔。
「涼ちゃん。涼ちゃんは火神になんて負けてねーよ」
「黒子っち、ねえ、黒子っちはどうして、どうして火神なの、ねえ、黒子っち、俺どうすれば、黒子っち、ねえ」
「涼ちゃん、涼ちゃん落ち着いて」
でもね、この子には俺なんて見えていないんだ。
きもちわるい。
「ねえ、涼ちゃん」
「涼ちゃんは火神が憎いの。それとも黒子が憎いの」
俺?俺は、綺麗な見た目も作った性格も俺を頼ってくれるとこも全部全部ひっくるめて
「そんなの、もう、わかんないッスよ、わかんない、ねえ」
君が憎いよ。
アンビバレンスと思え
(でも何より君を振り向かせられない俺が憎い)