夜中、それこそ直に朝日も顔を出すのではという時間帯まで勉強をしていたらしい兵助に揺り起こされて、俺はゆっくり目を明けた。まだ暗い。でもどこか仄明るい気もする。不思議な感覚である。兵助はようやっと勉強を終えたようで、揺さぶった手はそのままに、布団を握りながら大きなあくびをひとつした。どうしたの。腹が減ったんだけど。そうなの。兵助は寝ぼけているのか(本来寝ぼけるべきは俺なのだろうけど、惜しいことに俺は寝覚めがいいのだ)そんな事をいった。けれど俺は寝間着なわけだし当たり前に食べ物なんてないから、仕方なくふざけて手を差し出してみる。すると兵助はその手を二、三度嗅ぐと、なんと噛り付いた。まさかの行動にどぎまぎする俺をよそに、兵助は指に歯を立てる。血が出た。



130203