「お、おー!カントク、可愛い!すごい似合ってる!」
「へえ、結構いいな。リコ、似合ってるぞ。」


興奮した様子でそう言う小金井に、いつもの笑顔で褒める木吉。ほかの者たちも大体同じ事を思っているのか、うんうんと頷いていた。ある者は頬を染めて、ある者は口をぽかんと開けたまま見惚れている。そんな彼らにリコは少し照れながら応対していた。


「ところで、自分たちのクラスの出し物はどうしたの?」
「抜けてきた。」


リコはものすごい形相で彼らを睨み、自分たちの仕事場に戻るように促した。しかしせっかくリコがメイドさんになっているのに、それは勿体無いような気がして中々その場から動くことができなかった。リコのメイド姿なんて今日が最初で最後だろうことは分かっている、だから誰一人として動かなかった。
そんな彼らの苦労も知らずリコは不思議そうに首を傾げた。


(ぎゃああ!可愛い!何だよあの可愛いの!)
(一つ一つの仕草がいちいち可愛すぎるんだよな、リコは。)
(だああもうカントク置いていくの無理だよ!)


そんな心の叫びは、ある者達の登場で恐怖の叫びに変わった。




「カントクさーん!」
「あ、黄瀬くん?黒子くんに会いに来たの?」
「半分当たりで半分ハズレッスかね。カントクさんに!会いに来たんスよ。それより、すごい可愛いスね!」
「え、あ、・・・ありがとう。黄瀬くん。」


女子を魅了する素敵なスマイルをリコに向けた黄瀬。彼のどんなに素敵な笑顔でもリコはいつでも平然としていた。頬を染めることなど、1度たりともなかったのだが今日は何故だか反応が違った。頬をうっすらと染めて視線を下に逸らすリコ。それだけの動作で彼らの胸はきゅんとなる。


「ホント可愛いっスよね、カントクさん。センパイもそう思うスよね!」
「ああ、まあ、元々顔のつくりがいいからな。」
「笠松さんにそんなこと言われるなんて思いませんでした。」
「自分でも驚いてる。こんなこと言うなんてな。」


笠松は小さく笑ってリコを見た。そんな笠松が少し可笑しくてリコは笑った。笠松はリコが自分を見て笑うのを見て、リコの頭を軽く小突いた。しかしリコはまだ笑いを抑えられないようで、必死で口元を押さえて声には出さないように耐えていた。笠松はあまりの必死さに、吹き出し、今度は笠松の笑いが治まらなくなってしまった。
笠松とリコは周りの存在を完全に忘れていて、声を掛けられるまで二人は二人だけの世界にいた。周りの者たちはよくここまで耐えたな自分、と自分で自分を褒めたそうだ。


「ねえ、カントクさん。それは俺の為に着てくれたと思っていい?」
「森山のアホ。んなわけねえだろうが。」
「違った?ひどいなあ、俺はカントクさんのために昨日の試合も戦ったのに。」
「おま・・・っ。何か残念なイケメン通り越して、もはや気持ちわりいよ!」


可愛い女の子が大好きな森山の言葉に鋭いツッコミを入れる笠松を、リコは楽しそうに見ていた。彼らとなら毎日一緒にいても飽きないだろうな、と彼らと過ごす毎日を少しだけ想像して、小さく微笑んだ。



 

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -