05.不意打ち

それは、突然だった。


「のどかわいた」


ついさっきまで私の手元にあったカルピスが、先輩の手元に収まる。待ってください、先輩。まさか、それを飲むだなんてことはないですよね、あはは、まさかー。


「南沢先輩?」
「ん」


ゴク、
喉元が飲み込むたびに脈を打っているように見えた。先輩の薄い唇が、さっきまで私の唇が触れていた飲み口に触れる。か、間接キッスってやつですか…!そんな!ハレンチな!

女友達の間なら、なにも感じないのに。何故か先輩が触れるとすごくエロティックに見える。そして、気にしなければいいものを過剰なまでに反応しては狼狽える私がいた。
きっと先輩はいじわるだから、そんな私を面白がってやってるだけだろうけど、先輩が好きな私からすれば一大事なのだ。わなわなと震えながら、少し涙目で先輩のほうを見る。南沢先輩は、それはもう愉快そうに目を細めている。私と目があい、よりいっそういやらしい笑顔で笑いかけていた。
はい、いただきました。撃沈。


「なぁ、お前さ、いつになったら慣れんの?」
「な、慣れるだなんて、そんな…!ハレンチです!」
「…アホか」


先輩の腕が私の頭上に伸びてきた。ポンポンと私の頭を優しく撫でてから、おでこに柔らかな感触が触れた。あまりにも急な出来事だったから、私は何も反応ができず、ただぼうっとしてることしかできなかった。


「だってお前がいつまでもそんなんだと、迂闊に手ぇだせねーじゃん」


にんまりと微笑む先輩があんまりにもかっこよかったから、私の頬はさらに熱く燃えるように赤くなる。そんな私を見てクツクツと微笑んで、「ほらまたそーやって」と私の髪を掬い上げ梳かした。


と、思ったら視界は急に暗転した。暫くすれば、それは先輩が至近距離にきたからそうなったのだと理解する。初めての唇の感触。先輩のにおい。あれ?先輩もちょっと顔が紅いような…


「いつまでも待てるほど俺も大人じゃねーから」


先輩、それは、反則です。




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初南沢。ちょっと無理があったかも。

0703