04.おはよう

喧嘩したら、もう私は謝らない。
意地っ張りで、わがままだって自覚はあるけど、謝らない。だって、私がここで謝ってしまったら、鬼道はきっとこれからも私の知らないところで嘘をつくんでしょう?だってさ、聞いてよ。この前なんてね、帰り道にたまたま鬼道のところに寄ってやろうと思って、行ったわけよ。そしたらさ、マネージャーと仲よろしくやってるんだよ!?別に、サッカー部辞めろだとかそんなん言ってないし、他の女子としゃべるなっていうのも部活する上では厳しいと思う。でもね、あの笑顔は私にしか向けられていないと思っていたのに、ぶち壊された気持ちなんだよ。頭撫でられるのも、そうやって笑いかけられるのも、彼女の特権だと思ってたんだよ。ほら、私ってなにひとつこれといった取り柄ないじゃない?だから、鬼道の彼女っていう実感なんて実のところないのよ。もしかしたらあたしの妄想の権化なんじゃないかなって思っちゃったりするわけですよ。ねぇ、どう思う?ひどくない?でもこんなたらし男なのにまだ好きって自分がもう重症なんだよね、うわー、もーいやだ。でも、私、謝らないけど別れもしないから。めちゃくちゃねちっこいややこしい女って思われるかもしれないけど、やっぱり好きなんだもん。とられたくないよ。鬼道はものじゃないけどね、それもわかってるよ?
……ねぇ、ちょっと、聞いてる?ちょっと!なに、なんでそんな遠くのほう見つめてポカーンとしてるのよ!!ねぇってば!おい、風丸こら。聞いてんのか…かぜま…


「こんなところで何やってるんだ?」
「き、鬼道……」
「俺を差し置いて浮気とは、いい度胸だな。」
「ち、ちが…そんなんじゃ…!」
「ほら、いくぞ」
「ちょ、まって…」
「ほう、彼氏である俺と帰るのに何か不平でも?」


風丸が惚けて見ていた先には、不機嫌極まりない顔をした鬼道が立っていた。どこまで会話を聞かれていたんだろう。距離的には聞こえてるはずないんだけど…地獄耳だからなー。風丸は冷や汗をかいてつくり笑いを浮かべている。なんかごめんね、風丸。心の中で謝罪の言葉をのべてから(私が謝らないのは鬼道にだけだ)鬼道に首根っこを掴まれてズルズルと引きずっていかれる。私は猫じゃないという反論もあっけなくスルーされ、ひと気のない場所へ連れていかれるやいなや、キスが降ってきた。


「ちょ、なにすん、むっ」
「少し黙っていてくれ」
「なんっで…!あっ、んぐ!」
「舌噛むぞ」


ちゅっちゅっと舌を吸われたり歯の羅列を舌でなぞられたり。鬼道の怒りのキス攻撃に翻弄される。だめだめ、私。こんなところで負けてちゃ名が廃るぞ!そう思い、鬼道をキッと睨むと、等の本人は逆効果だと言って笑った。さっきまでの威勢はどうした?とでも言いたげに楽しそうに、私を弄んでくる。私が根気負けして、へたりこんだところで、鬼道はにやりと舌なめずりをしてから私にいった。


「そういえばまだ言ってなかったな…、おはよう。」
「は」
「ちなみに昨日のマネージャーは妹だ」


そんな優しい顔で笑ったってそんな声で名前を読んだってまだ許してなんかやらないぞ。鬼道は本当にずるい。これだから私はいつまでたっても鬼道を嫌いになれないのだから。
---------------
電車待ちの時間に書いた物なのでよくわかりませんorz
0602