#8.
side.Conservation

かさばる資材をぼんやりと眺めながら、頬杖をついた。いかんせん、目の前ではかの人体実験再来、とでもいうかのように阿鼻叫喚が鳴り止まない。
当然耳栓はつけている。むしろイヤフォンをつけて音量は大にして音楽すら聞いている。それでも聞こえてくるというのは、イヤフォンの質が悪いのか、彼らの悲鳴がそれに勝ったのか。それとも私の耳に悲鳴が張り付いているのか。

マスクをしているため、私の表情全てを悟られることはないだろうけど、それでもきっと私は惨めな顔をしているに違いない。嗤えてくる。彼らの事を可哀想だと思っている反面、自分は彼らに残酷な仕打ちを助長させる装置を修理しているだなんて。

勝手な頼みかもしれない。それでも彼らには生き抜いてほしかった。この過酷なサバイバルを。私は、点検と呼んで残虐な装置にある加工を施した。それは、致死量と判断、致命傷と判断された時点で延命に切り替わる装置だ。
職員らには、より低コストで沢山の実験ができると謳い、納得を得ることができた。彼らからすれば、死んだほうが光ある未来に思えるかもしれない。だから恨まれる覚悟の行動だ。例えどれだけ苦しくとも、いつかその経験を生身で語ってもらわねば、困る。歴史を繰り返さないためにも。

こんな仕打ち、本来ならば今直ぐにでも廃止するべきなのだと、あの人体実験を目の当たりにして思った。私の心境の変化が、怖い。いつかこの組織に歯向かってしまいそうで、怖かった。
でもきっと少年たちのほうが怖いはずだ。だから今は耐えてほしい。今は、私にはそんな権限はないけれど、きっと内部からひっくり返してみせる。
勝手ながらに私は誓った。

それが随分と自分本意なエゴだなんて、その時の私には知る由もないのだ。なぜならば、熱に浮かれ、この行動はやはり、"業務"という言葉に操られていたからにちがいない。