「ちょっと、そこを歩く季節はずれのサンタさん、
そう、あなたです御剣検事、手袋貸してくださいな」
「…私の手元を見てから言ってくれないだろうか
手袋がどこにあるというのだ、
持っていたらとっくにしてるに決まってい、 ムッ!」
「おじゃましまーす」
「…なまえくん、それは手袋ではなくポケットと言うのだが」
「手を入れる袋ですから一緒です」
「…む」
先週新しく買ったばかりのオニューの可愛らしいコートには
とても残念なことに機能性は追及されていなかったようで、
どこをどう探してもわたしのいうところの手袋は付いていなかった。
全くもう、この寒い季節、どこに手をしまえというのだ。
わたしが都合よく潜り込んだ手袋には当たり前に先客がいて、
その冷たそうな表情とは裏腹にぽかぽかと暖かい手がわたしを出迎えてくれた。
その手はわたしの侵入に大混乱しているようでせわしなく逃げ回っていたので、
ぎゅっとその暖かい手のひらを握り締めてみると、彼はびくっと全身を震わせていた。
(……おもしろい)
いやらしい表情をして彼を見上げると
彼は困惑した表情でわたしを見下ろした。
「耳、赤いですよ」
「…風が冷たいから、な」
「えへへ、じゃあそういうことにしておいてあげます」
「………」
鼻先も服も耳もどこもかしこも真っ赤なサンタさん
新人トナカイはそんなサンタさんの手を握り締めて、道を行く