初めて彼を見たのはなるほどくんの事務所に遊びに行った時だった。

何かの(わたしには判りかねる)事件を
なるほどくんが抱えていた時に、彼は成歩堂法律事務所にやって来た。

何やら入り口で真剣そうに会話をしながら、
敵に塩を送ってもらう私は検事失格だろうか、と
唇をぶるぶる震わせている彼を見たのが最初だった。
なんだあの男は、と思った。

その次に彼を見たのは、なるほどくんの裁判を
真宵ちゃんと傍聴しに行った時だった。

何かの(またしてもわたしには判りかねる)事件の裁判で、
彼は検察官としてなるほどくんの反対側に立っていた。

あの人は検察官だったのか。
ああ、そうか、前回の敵に塩うんぬんの意味が
なんとなくわかったような、いやまあ正直よくはわからないけれど
そりゃあぶるぶるもするよなあ、と思った。

しかし裁判が始まって早々わたしは困惑を極めていた。
不敵な笑みを浮かべ、恭しくお辞儀したかと思えば
汗だくのなるほどくんにクールに指を突きつけてる彼に
わたしは釘付け状態だった。なんだ?あれは、誰だ。

あの彼に対しては、わなわなぶるぶると震えている印象しかなかったので
あそこで恰好付けているのは双子の兄弟か何かなんだろうと納得していたところ、
途中、なるほどくんにズバッと切り返された途端に
ぶるぶるし始めたので、あれは間違いなく本人だと断定した次第である。


前回、前々回、今回と合わせてみると彼を見るのは3回目になる。
今、彼がわたしの目の前で真面目な顔をして座っている。

たまたまとある事件のなにかを目撃してしまったために
目撃者であるわたしのお話を聞きたいというのだ。

といってもわたし自身は事件の本筋を知らないので、
自分が見たことだけをとりあえずそのまま彼に説明する。
わたしの目撃情報がどういう状況を復元できるのか、それはわからない。

けれどわたしの話の中で事件に関する重要な何かがあったらしく、
彼はトレードマークらしき、まっさらなひらひらの布を
机の上の紅茶に染み込ませるほどにそれはもう興味津々に、
まあ仕事なのだから当たり前なのだけれど、
ずずいと前のめりになって話を聞き始めた。

え、これはなに、大丈夫なのか、と思ったけれど彼は気づいていない様子だった。
そして、その白がじわじわと染みていく様が面白かったので
わたしも特にそれについて注意はしなかった。


けれどあまりにも紅茶色に染色されまくっていたので、
話をし終えた後にその事をゆっくりと告げると、
「…その、なんだ、君、もっと早く言いたまえ…!」
と顔を赤くしながらわたしに抗議してきた。

そのさまがあまりにも可愛すぎて、
思わず恋心が芽生えそうになったのは内緒である。


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