「真奈…」
名前を呼ばれて振り返れば、いつもよりもちょっとだけ挙動不審な秋夜がいた。
ほっぺも少しだけ赤い気がする。
「…秋夜?」
首をかしげて名前を呼び返せば、それに反応したように秋夜の肩がびくりと揺れた気がした。
「これを、真奈に、」
そう言って差し出されたものに視線を落とせばそこにいるのは小さな入れ物に入った、…なんだろう?
「…前に似合う香りを作ると約束しただろう?」
「えっ」
あんなに前のこと、まだ覚えててくれたんだ。
うれしいの半分と驚き半分に声を上げてしまった私に、不安そうに秋夜の瞳が小さく揺れた。
その不安の消してあげたくて、秋夜の手ごとぎゅっと握りしめる。
「本当に作ってくれたんだ?」
「あ、ああ…迷惑、だったか?」
窺うようなそんな視線がまるで小動物みたい。
戦うときはあんなにかっこいいのにね。
「ううん、そんなことない!すごくうれしい!」
「そ、そうか…」
今度こそ安心したように笑ってくれる秋夜。
手の中にあるものに顔を近づければ、花みたいな、だけどやわらかくてやさしい甘い香りがした。
「いい香り…」
「真奈に似合うと思って、真奈のことを想いながら作ってみたんだ」
そうしたらたまらなく真奈に会いたくなった。そう言って恥ずかしそうに微笑む秋夜。
「大切にするね、なんだか使うのが勿体無いな…」
「それは駄目だ、真奈の為に作ったのだから真奈に使ってもらわなければ、」
「うん、ちゃんと使うよ」
だって秋夜の気持ちがいっぱい詰まってるんだもんね。
なんて、照れくさくて、さすがに言葉にはだせなかったけれど。
ねえ、知ってた?
秋夜が笑うと私もうれしいんだよ。
だから、秋夜が傷つけば私も悲しい。
ずっとずっと、笑ってて欲しい。
いつもそう思ってるから、傍にいるね。
だから秋夜もずっとずっと傍にいてね。