ぼくらが歯を立てる理由

(大学生設定)



まさか、こんなリコさんが見れるなんて思ってなかった。
だって缶チューハイ1本ッスよ?
いや、そりゃまあ男の子ッスから、もちろん期待ならすっごいしてたけど。


「リコさんほっぺまでピンク色ッスね」
「ん〜」

かーわいい、そう言ってリコさんに伸ばした手は反対側に座る火神っちに叩き落とされてしまった。
ずるいッス!自分はリコさんの肩に手までまわしちゃってるくせに!

「火神っちのけち!」
「どさくさに紛れてなに触ろうとしてやがる!」
「だって、酔っぱらって体中ピンクになってるとかかわいすぎじゃないッスか!」

もうここはぎゅうしてあげるしかないかなーって、って言ったらすごい目で睨まれた。

「変な目で見んじゃねえよ」

ははっ笑っちゃうッスね。
それを火神っちが言うんスか?

「こんなかわいいリコさん前にして、火神っちはなんとも思わないんスか?」

そう言いながらリコさんの火照った頬から首筋を手のひらでそっと撫でれば、くすぐったそうに声を漏らす。

「んっ、」
「リコさん?起きた?」
「ん、きもち、い…」

目は閉じたまま俺の手にすりよって来るリコさんは、今まで見たことない顔でうれしそうに笑った。
どっちかっていうと低体温な俺の手はアルコールのまわった首には気持ちいいのかもしれない。

「きもちい?リコさん」

耳元で囁くように声を出せば、さっきよりも気持ち良さそうに吐息をこぼす。
それなのに僅かに寄せられた眉間だけが普段とは違う色気を醸し出してて、思わずえろいと呟いてしまった。

「おい!黄瀬!」
「火神っちだって触りたいくせに」

リコさんから目を離すのが勿体なくて、視線をそらさないまま言ってやれば空気だけで火神っちが動揺したのがわかった。


「火神っちも、本当はここも、ここだって触りたいんだろ?」

言いながら、やわらかそうな唇に触れる。
そこから首筋、鎖骨を撫でて、少しはだけたシャツの内側に指先を忍ばせる。

「俺は欲しいッスよ、ここも、この中だって」
「俺は、」
「ん、」
「このかわいい声だって、全部」

赤くなってる耳にキスをひとつ落とせば、拒否するように俺の肩をぐいっと押し返そうとするけど、酒のまわってしまった体じゃ力なんて入ってないようなもんだ。
それがまるで誘われてるみたいで、余計に興奮するだけ。

「いいんスか?このまま全部もらっちゃっても」

挑発するように火神っちに視線を向けたままリコさんの耳に歯をたてる。

「っ…いいわけあるか!」

火神っちが小さく叫んで俺の肩を突き飛ばす。
まさかそこまでされると思ってなかくて油断してた俺の体は簡単にころんと吹っ飛んだ。

「ん、…カントクっ」
「かがみ、くん」
「ああ!ずるいッスよ火神っちばっかり!」

火神っちの肩にすがり付くように手を伸ばすリコさんの体を取り返すように胸に手を伸ばす。
本人は気にしてるみたいだけど、言うほど小さくないと思う。
っていうか、リコさんなら小さいのもあり、全然ありッス。

「かわいいッスよ、リコさんの」
「っ!」

いやだいやだと首を横にふって、助けを求めるように火神っちがに抱きつくのを見せつけられるのは気にくわないけど、大きくないなりにもやわらかく指を跳ね返す感触から手を離せそうにない。

「かがみ、く、…ったすけ」
「カントク、大丈夫だ」

宥めるようにキスをする姿はまるてナイトみたいで、あーあこれじゃ俺が悪者みたいじゃないッスか。
ちょっと面白くなくて、目の前にあるうなじに歯を立てる。
痛がるリコさんの声と俺の名前を怒ったように呼ぶ火神っちの声を聞きながら、ああ俺も酔ってんのかなー、なんて自分に言い訳をひとつ。
だってそれぐらいしなきゃ、明日になって目を覚ましたリコさんと冷静になった火神っちが怖すぎる。


(お酒を言い訳にして、それでも触れたいだなんて、情けない俺を笑ってよ。)





◎9万打のお礼のつもりが…こんなセクハラなお話しになってしまって申し訳ないです!
でも楽しかったですすみません
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