「……おっきい」
「あ?」
不機嫌なその声に振り返れば、ベッドの上に座りながら俺のシャツを羽織ったカントクがいた。
なんか…機嫌わりい?のか?
「知ってたけど、……なんかむかつくわ」
「なにが、っすか?」
「これ」
「これ?」
首をかしげる俺を猫みたいな目が睨みつけてくる。
まあ、少しも怖くなんてねえけど。
「ほら」
そう言ってベッドの上に立ち上がったままくるっと一回転。
「そりゃ身長だって大きいの知ってたけど、悔しいじゃない」
まさかこんなにぶかぶかなんて予想外よ!そう言って唇を尖らせる姿はまるで小さい子供みてえだ。
拗ねたように唇を尖らせて、風呂上がりのせいで手も足も首までピンクにして、ほっぺたを膨らませて目を吊り上げて怒る監督。
高校時代は全部恐怖にしかみえなかったはずなのに、今では全部がかわいく見えるから困る。
どんなに怒ったって泣いたって叫んだって、ただの女の子にしか見えない。
あとは、あれだ、猫だな。
「…っふ」
「ちょっと!なに笑ってんのよバカガミ!!」
「なんでもないっすよ」
適当にごまかして、ベッドの上に仁王立ちしたままのカントクの脇に手を入れて抱き上げる。
「よ、っと」
「ちょっと!」
「なんすか?」
「それは、こっちの台詞でしょーが!」
抱き上げたままベッドの上に腰を下ろす。
「小さくてかわいいと思う、…です」
「小さいって言うな!」
振り上げられた手を掴んで、もうひとつの小さいところにシャツの上から歯を立てる。
「ここも」
そう言ってにやりと笑い返して、反撃をくらう前に開かれた唇を塞いだ。
(小さいの大好物です)