風呂からあがるとテレビをじっと眺める小さな背中を発見した。
水色のTシャツを着たその背中を、気付かれない程度にじっと眺める。
なんか、いいな。
俺のもんて感じで。
もし本人に聞かれたら一発ぐらい殴られそうだから、あえて口にはしない。
「なに?」
見過ぎたのか、不思議そうな顔でこっちを見てる。
「いやー、でっけえなーと思って」
「なによ、嫌味?」
少しだけ目を吊りあげて見上げてくる目に顔がゆるみそうになって、だけどそれを晒すほど馬鹿じゃねえ。
「んなわけねえだろ」
言いながら、リコの隣に腰を下ろす。
「ふふ、冗談よ」
ぎゅっと膝を抱えなおして、くすくすとまだおかしそうに笑ってる。
悪戯好きの猫みたいな女。
そういうところがわりと、いや、かなり、気に入ってる。
だけどそれ以上に、その顔を崩す瞬間が好きだ。
自分がかなり最低なことを考えてるってのは自覚済みだ。
まだ笑ってるリコに、お仕置きだと返して腰に腕をまわして膝の上に抱き寄せた。
「きゃっ」
「かわいい声出せんじゃねえか」
「っ…最低!」
「もっと最低なこと考えてるぜ」
「絶対聞きたくないわ」
強気な言葉のわりに困った顔で視線を彷徨わせてる。
その顔がたまんねえんだよ。
口だけで笑い返すと、リコの瞳が濡れてくるのがわかる。
ほら、さっさとここまで落ちてこい。
(そこはふたりだけの世界)