同じ屋根の下に暮らしてたっていつも一緒にいられるわけじゃない。
寂しいって思わないわけじゃないけど、それを口になんて出したくなかった。
そんな男にも女にもなりきれないような、中途半端な私の感情。
それでも宮地さんの中にちゃんと私の居場所があれば、私は安心して傍に居られる。
入るぞ、という声と同時に開いた、そこ。
ベッドの中から視線を向ければ見慣れた長身の彼がいた。
「…仕事?ですか?」
「おう、急な会議が入った」
疲れたようなため息を吐き出して、返ってきたのは苦笑。
労わるように、疲れの滲んだ目元に手を伸ばした。
「嫌って言ったのに言うこと聞かない宮地さんに罰があたったんですよ」
笑ってそう言えば、腰にまわった腕に強く抱き寄せられた。
「わっ」
「…色気ねえなあ」
「う、うるさい!」
「…充電ぐらい、させろよ」
そう言って、意地悪そうに笑う顔はいつも通りのもので。
さっきまでの疲れた顔なんてもう今は見当たらなかった。
充電なんて、私を喜ばすだけの言葉をどうしてこんなに簡単に言ってくれるんだろう。
これ以上甘えたくなんてないのに。
それでも、こうして触れ合ってしまえば腕を伸ばさずにはいられない。
「…宮地さん」
「あ?」
「会議なんでしょ?遅れますよ」
「抱きしめる時間ぐらいまだある」
「…うん」
そっと身を寄せて、安心したように体を預けてくる。
その姿はいつもの鋭い視線を持つ宮地さんなんかじゃなくて。
私の知ってる、私だけが知る宮地さんだった。