Je te veux



なんだか最近よく山本さんと目が合う気がする。
そして、その目の色がいつもと違うような気がするのは……ハルの感違いでしょうか。


「あ、」
「あれ、ハル?」
「はい、今日はツナさんは一緒じゃないんですか?」

二人きりなんて、滅多にないことにちょっとだけ緊張する。

「ツナなら獄寺と先に帰ったはずだけど」
「残念です……すれ違ってしまいました」
「んじゃ、一緒に帰ろうぜ!」
「はい」

緊張を紛らすようにいつも通りのハルを演じてみたけど、うまくできたでしょうか。
少し心配になってそっと山本さんを見上げてみると。
隣に並んで足を踏み出した瞬間、視線の色が変わったのを感じてしまった。

「(あ、どうしよう)」
「なあハル」
「は、はい!」

いつもと同じ声なはずなのにその目が、雰囲気が、いつもの山本さんと違いすぎて怖い。

「ハル」

もう一度名前を呼ばれて、手首をつかまれた。
その強さに緊張が増す。

「もう気づいてるかもしんないけど」
「はい」
「ハルはツナが好きって知ってるけど」
「はい」
「俺……ハルが好きだ」

今度は「はい」なんて言えなかった。
だって山本さんの手はちょっとだけ震えてるし、ハルだってさっきよりもっと胸が痛い。

「ハルは……、」
「言わないでいい」

つかまれた手首ごと抱きしめられた。
強く強く、まるで押し付けるような抱擁。
それはいつもの山本さんとはすべてが違っていて、酷く乱暴な動きだった。

「答えはわかってるからさ、今はまだ聞きたくねーんだ」

そのせつない声にハルのほうが泣いてしまいそう。
声も出せずに、一度だけ頷いて見せた。

「サンキュー」

ゆっくり離された体にほんの少しだけ感じてしまった淋しさには、気付かないふりをした。
見上げた顔は、もういつも通りの山本さんだった。
それに安心して、少しだけ笑えた。

「帰ろ」

やさしく笑って、目の前に出された掌。
ちょっとだけ躊躇って、でも山本さんの笑顔が嬉しくて大きな掌に自分のを重ねた。

歩くたびに絡む指先が少しだけ恥ずかしかった。





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