「あーもうどこ行ったんだよ!!」
さっきまで隣を歩いてたはずなのに。
こんなことなら手を離すんじゃなかった!
人の流れに逆らうように名前を呼びながら、あいつを探した。
あの長いみつあみを早く早く掴まえないと。
「岳人さんっ」
探してた声に名前を呼ばれる。
声のした方を振り替えると、半泣きの桜乃が道路を挟んだ向こう側に立ってた。
「桜乃!」
ダッシュで、試合中にも負けないくらいの早さで道路を渡って、不安そうな桜乃に手を伸ばす。
それでぎゅーっと抱き締めてやる。
「桜乃のアホ!ミソ!バカ!」
「ごめんなさ…っ」
背中にまわった手がきゅっと俺の服を掴んだ。
その指が小さく震えてるのを服越しに感じた。
苦しいような切ないような気持ちになって、もっともっとぎゅっと強く抱き締めた。
「隣見たら急にいなくなってるから焦ったっつーの」
「人にぶつかっちゃって、そしたら岳人さんいなくなってて…」
一瞬、桜乃の声が泣きそうに震えた。
抱き締めてた腕を離して顔を除き込んだら、擦ったせいか目の下が赤くなって痛々しい。
あんまり来たことないこんな街中で俺とはぐれて、一人になって、怖かったんだろうな。
「じゃあ、こうして手繋いでようぜ」
強引に手をとって、指を絡めて、恋人繋ぎ。
これでそう簡単には離れない。
今度こそ、離さないからな。