獄寺さんは、ハルの気持ちなんて気にもせず、いつもいつも急に触れてくる。
もー心の準備くらいさせてください!
「……あの」
「なんだよ?」
ハルだって別に嫌なわけじゃないんです。
くっついてるのは好きだし、好きな人に触れられるのはうれしい。
でも…
時間と場所を考えて欲しいんです!
「…ハルは今、ご飯を作ってるんです」
「作ればいいじゃじゃねえか」
そう言いながら音を立てて頬に口付けてくる。
「ちょ、獄寺さん?!」
「んだよ?」
「だ、だから、ご飯作れないって」
「ッチ……うっせーな」
言葉と同時に後ろから抱き締める腕の力が増して、ちょっとだけ苦しい。
このまま強引にご飯を作れないこともないけど、後が怖いので……ここは獄寺さんのしたいようにさせるのが一番よさそうです。
少し力を込めて腰にまわってる腕をはずし背伸びをして正面から抱きついてあげた。
「……飯は?」
せっかく獄寺さんの望むとおりにしてあげたのに…
最初の言葉がこれって、どーなんですか?
また出そうになったため息をなんとかこらえる。
しかたないから、今日は甘えさせてあげることにします!
「嫌なんですか?ご飯のほうがいいですか?」
そのハルの言葉が予想外だったのか、ほんの一瞬驚いたように目を見開く獄寺さん。
……珍しいかも。
そんなことを思ってじっと見つめていたら、中途半端な位置で固まっていた獄寺さんの手がまた腰にまわった。
ハルの額に獄寺さんのそれをコツンとくっつけ、瞳を合わせる。
「おまえがいい」
目の前には、ちょっと人をバカにしたように笑ういつもの獄寺さん。
それにつられて、ハルも笑顔になる。
外にいるときはあまり触れようとしない彼が、誰の目も気にせずに触れてくれるこの時間。
ハルだって実はそれを望んでる。
目を伏せて顔を近づけてくる獄寺さんに気づいて、ハルも同じように目を閉じて与えられる熱を待った。