染められて



いつからかなんて、そんなの知らない。
気づいたら俺の中にいたんだ。

いつもちょっと緊張したような肩だとか、目が合うだけでほんのり染まる頬だとか、たいした身長差もないのにうかがうように見つめてくる視線だとか。
そんなふうに竜崎の中の特別を見つけるたびに俺はもっともっと夢中になっていった。
過去と呼べるほど遠くない俺たちの出会い。
あの頃はこんな風に、竜崎のことを考えるたびにむず痒くなる自分なんて想像すらしなかった。



「リョーマくん?」

振り返れば、委員会の仕事を終わらせた竜崎がそこにいた。
相変わらずはずかしそうにして、でもうれしそうに笑ってる。

「もう、終わったの?」
「うん」

無言のまま目の前の体に手を伸ばす。
出会ってから1年で少しだけ成長した自分の体は、簡単に竜崎の体を隠す。

未だに力加減なんてわからなくて本当は少しだけ怖いなんて、俺だけの秘密。

「ねえ、誰かに見られちゃうよ」
「見られたっていい」

真正面から両腕をまわして抱きしめる俺から逃げるように少しだけ体を揺らす。
でもそんなのなんの抵抗にもならないって、もういい加減気づいてよ。

「でも…見られたら恥ずかしいよ」
「おれは恥ずかしくないし、きっと見なかった振りしてくれるから大丈夫」

俺の腕から逃れる言い訳を探す竜崎ごとさらりとかわして、そっとこめかみに唇を落とした。
そして、一瞬だけ震える体。
抱きしめるだけではずかしがる竜崎は、もちろん未だに唇を許してくれなくて。
だからこれくらいは許してほしい。

「さっきより赤くなった」

からかうようにこめかみからその真っ赤に染まった頬へと口づけた。
触れるか触れないか、そのくらい微かななタッチで。
かすめるように触れていく。

「もう、リョーマくん」

少し拗ねたように唇を尖らせるその顔は付き合うようになって見せるようになった表情の一つ。
たまに見せるそれが実はおれのお気に入りだってこと。
ねえ?いつになったらアンタに教えてあげようか。




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