※あまりネタバレしてるつもりはありませんが、最終回を見ていない方はご注意ください。
「お疲れさまでした」
そう言ってタオルを渡せば、いつも通りやさしい顔で笑う真琴先輩。
「ありがとう、それと、ごめんね」
「なにが、ですか?」
首をかしげて先輩を見上げれば、さっきまでの優しい笑顔はちょっとだけ困ったようなそれに変わってた。
「心配、かけちゃったなあと思って、さ」
「…はい、心配、すごくしました」
真面目な顔をつくってそう返したけど、どんどん下がっていく真琴先輩の眉毛を見てたら最後には笑ってしまった。
「でも、いいんです、みんな笑ってたから」
「うん、」
「お兄ちゃんの笑顔を見せてくれて、ありがとうございます」
そう言って、頭を下げる。
ずっと、ずっと、見たかった。
ずっと、ずっと、待ってた。
そして、ようやく見れた笑顔は望んでた以上のものだった。
「みんなかっこよかったです」
そう言えば、真琴先輩が凛がじゃなくて?なんてからかうように笑うから、同じように笑い返す。
「私のお兄ちゃんはいつだってかっこいいんです!」
「江ちゃんならそう言うと思った」
「お見通し、ですか?」
「お見通し、だよ」
そうして顔を見合わせて、2人で笑った。
「なに笑ってんだ?」
いきなり後ろから聞こえてきた声に振り返れば、お兄ちゃんがちょっとだけ拗ねたような顔で立っていた。
まだ濡れたままの髪をかきあげて、右手を腰に当ててこっちを窺ってくる。
「お兄ちゃん!」
呼んで、胸に顔を埋めるように抱きついた。
お兄ちゃんの、匂いがする。
もうそれだけで、泳ぐお兄ちゃんの姿が脳裏に浮かんで、目の奥がツンとして泣きそうになる。
「どうした?」
「すごくかっこよかった、一番かっこよかったよ!」
「…そーかよ」
「うん!」
胸から顔を上げてお兄ちゃんを見上げたら、うれしそうに目を細めてるお兄ちゃんがこっちを見てるから。
昔みたいに、私を見てるから、我慢できずに涙をぽろりとこぼしてしまった。
「ばーか」
呆れたように笑って、お兄ちゃんの指が私の目尻をそっと撫でていく。
そんな仕草にさえ弱った涙腺は刺激されるばかりで。
「っ…だいすき!」
それしか言えない私を、そのやさしい手のひらで涙ごと受け止めてくれた。
(お兄ちゃん、おかえりなさい。)
◎途中からまこちゃんが空気になってしまってごめんなさい…
色々と私の勝手な解釈になってますが、江ちゃんにはおかえりと言ってほしい。