君しか、俺しか、拾えないもの



昨日も、今日も、いつだって。
相変わらず一生懸命だ、俺らのマネジは。



じりじり肌を刺す熱も気にすることなく動き続ける。
その手は俺のなんかよりも小さいくせに、随分と働き者だ。
そんな篠岡を後ろから眺めながら、もっと頼って欲しいと思う俺は間違ってるんだろうか。

溜息を飲みこんで、足音を立てないように距離を詰めた。

「(ったく…どんだけ集中してんだよ)」

しゃがんだまま草を刈る篠岡の後ろに同じように座り込んで、まだ冷たいはずのポカリを篠岡の首筋に当ててやる。

「ひゃっ!」

変な声を出して大きな麦わらを被った頭がこっちを振り向く。

「よー」
「あ、阿部くん」

ぱちぱちろ、大きな目が何度も瞬きを繰り返す。

「ぶっ倒れても知らねえぞ」

今度は頬にポカリを当ててやる。
そうすると、冷たい、と言ってうれしそうに笑った。
まだあまり見慣れない、ふにゃりと蕩けるような笑顔だ。
それだけで、体中から熱があふれてくるのがわかる。
そんな自分自身を誤魔化すようにペットボトルの蓋を開けてやる。
不思議そうな顔でこっちを見てくる篠岡の口に無理矢理押し付けた。
恥ずかしそうに笑って、それでも嫌がったりはしないで、押し付けられたままのペットボトルに手を伸ばしてくる。

「んっ、…うん、冷たくておいしい」

本日二度目の蕩ける笑顔。
そんな笑顔の大安売りに、俺のほうが熱くなりそうだ。


「マネジはお前しかいねーんだからな」
「大丈夫だよ」

暑さでそんなに頬を火照らせてるくせに、なにが大丈夫なんだか。
のほほんと笑う篠岡に呆れてため息がひとつ零れる。

「…なにを根拠に?」
「だって、倒れそうになったら助けてくれるでしょ?」

そう言って、ポカリを頬に押し当てながら笑った。
そんなうれしそうな顔、簡単に見せんじゃねーよ。
そして、言えない言葉がまたひとつ。

「だったら、無茶は俺がいるとき限定にしとけ」
「頼りにしてます」

そんな真っ直ぐな視線も、笑顔も、信頼も、まだ少しだけくすぐったくて。
それを誤魔化すように麦わら帽子ごと撫でてやる。

痛いと言って逃げようとする篠岡を、もうしばらくは離してやれそうにない。



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