スクアーロ 中編 | ナノ

  お子様の取り扱いにはご注意をE


これはスクアーロがヴァリアー本部に戻ってくる二時間前、とある日の昼下がりのこと。
一人、カエルの被り物をした青年が談話室で何やら小瓶を左右に振っていることから始まった。



「ふむふむ、」

何がふむふむなのかは深く突っ込まないこと。怪しげな色の液体が入った小瓶、この小瓶は何なのか、気になりますよね?ミーも気になりますー。これは師匠のところから掻っ払ってきたものなんですが何なのか全く知らないんですよねー。
これを誰かの珈琲にぽとり…と垂らしてみたいが、ここの人達は怪しいものに手を出したりしないし、変だと思ったら口をつける前に捨てられてしまう。無色透明で気づかれる要素としたら味や匂いだが……、

「(…臭いはない。ちょっと舐めてみたけど特に変わった感じもない。恐らくこの小瓶一つの量で効果が出るってことですかねー)」

不確定要素を持ったままチャレンジするのも良いが、後々面倒になるのは避けたい。でもやったら面白いことになりそうな予感はするのでやってみたい。
さてどうしますかねー、と首を傾げていると談話室の扉が開く音がした。

「はー……疲れた…」

顔を向ければ、シバノ副隊長が疲労困憊な様子で足を運んでいた。確かボンゴレがシリアの会合に出席するといって、護衛兼付き添いとして数日ここを開けてたっけ。この様子だと、仕事先でも何らかの仕事はしていたよう。仲裁役は仕事に愛されてますねーなんにも羨ましくないですけど。
ふらふらとした足取りでソファに倒れ込む。

「ここ副隊長の部屋じゃないですよー」
「部屋まで遠いの。少し休ませて………」
「あとで作戦隊長にどやらされても知りませんからねー」

その時、ピーンときた。
副隊長はよくここで休憩してることがあり、その際お茶を飲む。つまりお茶のセットを談話室に置いてある。つまり、ここに疲労で機能低下してる副隊長と、謎の小瓶がここにある。
つまり!これはそういうことだ。

「(まぁ、死ぬような薬じゃないでしょ)」

マフィア嫌いとはいえ、今はボンゴレの一部。わざわざ劇薬をつくって内争を起こす企てをするなんて流石に……、……ないとは言い切れないけど。
謎の小瓶を傾け、液体を垂らす。その上からお茶を注いでテーブルに置くと、副隊長が眠そうな目で見てくる。

「……、珍しいこともあるのね」
「ミーにだって善良な心はあるんですよー?」
「自分から言うところがきな臭いわね…。何を企んでるの…?」
「別になんにもないですよ、副隊長に胡麻をすっても給料上げろとか仕事減らせとかベル先輩殺っていいかとか言ったところで何にもなりませんからー」
「生意気な要望が多いことね……。仕事と給料に関しては…私よりボスに、言って……。ベルを殺っていいかは、半分までは許可するわ…。それ以上だと業務に支障が出るから……」
「後者には割りと寛大ですねー、何か恨みでもあるんですかー?」

そう……、と段々反応が悪くなる。まあ、あまりお茶のことを強調するとそれこそ何かあると思われる。ここで去るとしよう。

「じゃーミーは次の任務にいってきますんでー、ごゆっくりー」
「んー……」

生返事が帰って来た。恐らく余力も尽きてきたんだろう。
さて、任務から戻ってきたらどうなってるか楽しみですねー。




ぱたん、と扉が閉められる音を微かに聞いた。

「喉乾いた…」

テーブルには彼が用意してくれたお茶がある。のそりと体を起こしてカップを手にする。湯飲みが置いてある筈だがティーカップに淹れたのは敢えてなんだろうか。
すん、と匂いを嗅いでみるがお茶の香りしかしない。少しだけ口に含んでみても、変な味がするわけでも体に異変が起きる感じもない。

「んん、本当にただの良心で淹れてくれたのかしら。しかしあの子だからなぁ……」

疑いはあるが、疲労と眠気で新たにお茶を淹れる気力もない。そして何より考えるのが面倒だ。まあ、大丈夫でしょう。
私はごくりとお茶を飲み干して再びソファーに横になった。すぐに睡魔が瞼を下ろして、意識を沈めていった。




二時間後。

「あ"ー…くそ、疲れたぜぇ……」

こっちは暗殺部隊だっつってんのに何で護衛しなきゃならねぇんだ、それなら本部の守護者どもにやらせりゃいいだろぉが。ちまちま戦うのは性に合わねぇ。ああ、盛大に暴れられる任務は来ないものか。これじゃストレスが溜まる一方だ。
そんな不満を垂れ流しながら、談話室に入る。
と、最初に目に入ったのは、自分と同じ隊服を着た誰かがソファに横になってる姿だった。

「……んだぁ?」




(2018.2.16)



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