恋はド直球が丁度いい
「最近、新ちゃんの様子がおかしいのよ。」
妙ちゃんが深刻そうに話しているのを新八君除いた万事屋メンバーが煎餅をほおばりながら聞いていた。いや、まあ新八君だって男の子だし色々あるのでは?
「んなこと言ったって新八がおかしいのはいつものことだろうが。今更何心配してんだよ。」
「確かに新ちゃんはおかしいところの1つや2つや3つや4つや5つはあるわよ。」
「実の姉が弟を変人扱いしてるよ。」
「黙りなさい、涼子ちゃん。それでね、毎晩部屋から低いうなり声を挙げてたと思ったらいきなり叫びだしたりして部屋で暴れ回ってるの。姉としては新ちゃんがこれ以上おかしくならないようにしてあげたいんだけど、こんな時どうしていいかわからないの。」
「そんなの涼子だってしてるアルよ。ほっとけばいいネ。涼子を見てヨ姉御!変人ながらちゃんとこうして生きてるアル!!」
「涼子ちゃんぐらいおかしくなったら、私新ちゃんと姉弟の縁を切る事になるわ。」
「アンタら私の事下に見すぎでしょう!!!てか、何人の事変人扱いしてんのさ!!ホントに失敬だよ!ね、銀さん!」
「いや、変人というところは自覚しとけ。世の中のためにも、俺のためにもだ。」
最近本当にみんなの私の扱いがひどすぎる。そんなに私は変人か!?いや、銀さんを襲おうとしてるけど、まあそれは愛故の暴走だからしょうがないとして、他は特に一般人として節度ある行動をとってるよ!?何が私の品格を落としてるの!?
「存在全てがだ。」
「銀さん、いくら私を愛してるからって心の中までは読まないで!嬉しくもあるけどちょっぴり恥ずかしいよ〜!」
「声に全部でてんだよ、この馬鹿娘。」
銀さんとのラブラブの会話をしてる中、いきなり私の前髪が数本風に舞い、ハラハラと畳の上に落ちた。
「おめぇら、今私が弟の相談してんだよ。くだらねぇ事抜かしてる暇があったら少しはその足りねぇ脳みそ働かせて考えろや、ああ?!」
「「すいませんでしたーーーーー!!!!」」
妙ちゃんは長刀を構えながらドスのきいた声を出している。ふざけていると本当にタマ取られる!!
私たち3人は仕方なしに新八君の部屋を訪れて、挙動不審な言動が何で起こっているのかを確かめに来た。部屋に入ると新八君は頭を抱えながら何やら1人悶々と悩んでいる様子だった。私たちが部屋に入って来てるのにも気づいていないようだ。
「ああ〜これは浮気になるのだろうか〜....いや、でもお通ちゃんはアイドルだし、そんな手の届く存在じゃないし....いや、でも親衛隊隊長として示しがつかない!!でも、この気持ちを無駄にしたは....あああああ!!!どうしたらいいんだあああああああ!!!!!」
妙ちゃんの言っている事は本当らしく目の前で新八君が挙動不審すぎる動きを見せている。はっきり言って気持ち悪い。
「銀ちゃ〜ん、新八キモいネ。もうめんどくさいから帰ってもいいアルか?」
「ああ、俺も激しく関わりたくねぇが、このまま帰ると妙に殺されるぞ。適当なアドバイスしてさっさと帰るぞ。」
「でも、私あの新八君とはあんまり関わり合いたくない。」
「安心しろ。お前もいつもあんなんだ。」
「いやいや!私はもっと女神のように美しく神秘的に動いてるよ!!」
「涼子〜他人から見れば新八も涼子も大差ないネ。」
「ま、取りあえずだ。新八に事情を聞くとするか。」
未だに暴れ回ってる新八君を銀さんがなだめ、落ち着いた状態へとした後、私たちは新八君と向き合った。
「ぎ、銀さん達来てたら来たって言ってくれれば良いのに...。」
「で?何でおめぇ最近暴れ回ってんだ?姉ちゃんにあんま心配かけさせんな〜。俺たちもいちいち頼まれるのめんどくせぇんだよ。思春期だからって邪気眼とかいって暴れ回んなよ。中二病じゃあるめぇし。」
「誰が中二病だよ...。違いますよ。ただ僕は....その....最近、というか、気になる人と言うか、まあできたんで....。それでちょっと...。」
「告って玉砕しやがれ、この眼鏡。」
「神楽ちゃんんんんんん!!!!ちょっとはアドバイス的なこと言えよおおおおお!!!」
「何かと思えばガキの恋愛かよ。どーせ、お通ちゃんの親衛隊隊長なのに他の女にうつつ抜かしちゃいけない〜とかくっだらねぇことで悩んでんだろ。」
「〜〜〜っ!!!ああ、そうですよ!悩んでますよ!でも、それが青春の1ページってやつでしょおおお!!アンタも人生の先輩ならちょっとは頼りになるアドバイスぐらいしてくださいよおおおおお!!!」
「素晴らしい!!!」
今まで口を開かなかった私がガッツポーズを作りながら勢いよく立ち上がったことで、3人とも少し引いたような顔をしている。
「つまりそれは恋!!恋の相談なんだね!?任せて!現在進行形で恋をしている私に是非手伝わせて!」
「お前じゃ碌なアドバイスなんてできねぇだろうが。毎回獣のように人を襲ってるお前が。」
「ふふふ、銀さん。少し私を甘く見過ぎだよ。そりゃちょっとは銀さんへの愛情表現が過激だからって、私が恋のアドバイスができないとでも?」
「『ちょっと』レベルじゃねぇんだよ。」
何とでも言ってください。銀さんへの愛情表現はそれぐらいがちょうどいいんです!
取りあえず今は新八君への恋のアドバイスが先決!新八君に向き直り、私はビシッと指を指した。
「新八君!男なら押し倒すぐらいの勢いで告白するのが常識だよっ!!」
「やっぱり襲ってんじゃねぇかあああああああ!!!何がアドバイスだよ!それじゃ銀さんにやってるのと同じじゃねぇかああああ!!!」
「何を言う!大体最近の男は草食系男子とか言ってナヨナヨしすぎなんだよ!もっと、こう...自分の想いを行動にのせて行く事が重要なんじゃないの!?」
「本能のままに行動したら犯罪者になっちゃうでしょうがああああ!!大体、涼子さんこそ、もし自分が銀さん以外の男からいきなり押し倒されたらどうするんですか!?」
「ん?取りあえず人間らしい理性もない本能のままの行動をしてきたことを後悔するぐらいボコボコにしてぶっ飛ばす☆」
「『☆』じゃないですよ!!さっきと言ってることが矛盾してるでしょうがあああ!!!」
「銀さん以外の男にそんなことされたら身の毛がよだつぐらいじゃすまないでしょうが!!!だから、銀さん!私を抱いて!!」
「だからの意味がわかんねぇよ!お前が一番の犯罪者じゃねぇかよ、この野郎!!」
結局私たちはアドバイスらしいアドバイスをすることができずその日を終えてしまった。
後日、神楽ちゃんが新八君が気になっている女の子を教えてもらい、話しかけて好きじゃないタイプを聞いてきたらしいが「眼鏡の男の人は無理。」と言っていたらしく新八君の恋はあっけなく幕を閉じたのであった。ちゃんちゃん☆
恋はド直球が丁度いい
(まあ、今日は飲もうや)
(僕、涼子さんみたいなタフな精神力が時々羨ましいですよ....。)
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