元就は…いつも嘘をつく。
冗談ぞ、なんて鼻で笑われながら言われても信じられないっての。
今日も春休みだというのに部活があって、でも唯一の救いは午前だけっていうことね。一日とかが大半だから。でもだからといって午後になにか予定があるわけじゃないの。だから元就を遊びに誘ってみた。OKされるなんて思わなかったけど、今日はラッキーが続く日なんだと前向きに考えることにした。(あとが怖いけど)
「もっとなりーぃっ」
部活が終わって元就の腕に自分のそれを絡ませる。他の部員のこの視線が痛い、でもそれを気にしていられないくらいあたしはこれからの元就とのデートがたのしみなの。デートって思ってるのはあたしだけだと思うけど。
「どうした、名前…」
「え、え…あっ、ちょ…」
微笑まれたかと思えばそれに驚いてる間に離れた腕を腰に回され、体がさらに密着。なんて冷静に言ってると思わないでちょうだいね!!!パニックでそれどころじゃないんだからああぁぁ!!!
ご苦労だったなと驚いてる他の部員に元就が一言そう声をかけ、あたしと元就の二つのカバンを持って部室を出る。
「も、も…元就ってば!!」
「……いかがした」
なんとかして腕を振りほどいた時にはもう元就の自転車が置いてある駐輪場まで来ていて、元就はさも何をあたしがこんなに必死になってるのかわからないとでも言うようにこ首をかしげた。可愛いけどさ!!!!
「今日どうしたのよ…」
「…どうもしておらぬが」
「してるよ!!それとも何、やっとあたしの魅力に気づいたわけ!?」
「………」
ほれ黙った!!いつもの元就だ。ってなんか複雑。
っもー…人の心も知らないでよくも…なんて考えながら元就の手にある自転車の鍵をとって千錠を解く。この後ろの席があたしの特等席でなんだかんだ言いながらも元就はちゃっかり載せてくれるんだ。その時に実感する元就の腰の細さといったら…〜〜っくぅぅう〜〜…
「……ああ」
「…?元就…?鍵開けたよ、行こうよ」
くいっと袖を引っ張る。それ口が広すぎて元就の腕がちっとも動いてないんだけどね。
元就は何の反応も示さないままただこちらを見つめて、ねぇともう一度袖を引けば手が動いてビクッと肩が震えた。
「名前…」
「な、なに…」
「名前…、我は…」
頬にその手を添えられ、さっきなんかよりもずっと近い距離まで顔をつめて…
全身が心臓になったように…すごく脈打ってるのが聞こえて…それが元就に聞こえるんじゃないかってのと、近いってのとでいろいろと限界があった。
「我は名前のことを好いているぞ」
「…ッ」
「昔から、今もぞ…」
そう、紡がれた唇の形がやけに妖艶で…いつもより近くに聞こえる声に体が熱を帯びて…嘘でしょ、両思いとか…今まで知らなかったし…なんて思いながらも、すっごく、
すっごく幸せで……
「元な………」
「名前…」
「………サイッテーッッ!!!!」
ベチン!!!!!
と今までで一番強く叩いてやった。
ほんっと、サイッテー!!!
駐輪場で呆然とする元就を一人残し、さっさと帰ってやった。
4/1(そういえば今日エイプリルフールだったわ…)
(考えてみれば元就の日じゃない)
(そんな彼の言葉に一喜一憂するなんて…)
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後日談(会話文オンりー)