ベリー | ナノ










最近、稟の様子が可笑しい気がする



そりゃあストーカーされてんだから、辺りを気にしたり神経質にちょっとはなるかも知れねェ



でも、ソレとは何か違う

良く分からねェがどっか挙動不審だ








『ごめん、ちょっと遅くなった』



あれから稟がバイトのある日は行き帰りを一緒にしている



だからか前よりも何となく稟の事が分かった気がする
…気がするだけかも知んねェけど、





「お疲れさん」


同時にさっき買った飲み物も手渡す


『ありがと』




笑って受け取ったあと、それをゴクゴクと一気飲みした


「…すげェな、」


『凄い喉渇いてたから、助かった!!』



エヘヘと照れた様に笑う姿にちょっとキュンと来た




「…お前たまにあるよな、」


『?』




「おら、帰んぞ」



『ッ!!〜……うん』





ほらまただ、

手を繋ぐ為に前に出すと、いきなりキョドって辺りを見回してからやっとだ



そんなにストーカー野郎を気にしてたら、逆に怪しまれんだろ


今もずっと下向いたまま黙ってるし
…どーなってんだ?






「なァ、」



『え!?…ドドドドウカシタ!?』




「いや、お前がどうしたッ!?」



やっぱりどっか可笑しい…
初めは照れてんのか?とかちょっと思ったけどコレは絶対そうじゃねェ…






もしかして俺、嫌われてんのか…??
何かしたっけか、



「(ヤベェ軽くヘコんで来た……)」


『?』




一度考えてしまうと、気にしないようにしても、どっかでまたそれに考えを繋げてしまう物だ


考え出すとマイナスの事しか浮かばなくなる








『トシ大丈夫?』


気付けば立ち止まった稟が前に立って顔を覗き込んでいた




『…ごめんね』


「?何が」




『下向いてたし疲れたのかなって、…いっつも部活あるみたいだし』



さっきまでの笑顔とは変わって急にシュンとした顔になった



「(可愛い…)」



俺の心配してくれるって事はそれ程嫌われてる訳じゃねェって事だ


取り敢えず安心する





『本当に無理しなくて良いからね…?部活忙しいなら別に』


「心配すんなって、別に無理してるとかそんなんじゃねェから…考え事してただけだ。それに稟は別に俺の事とか気にしなくて良いっつったろ?」



俺の答えに納得出来ねェのかムスッとした顔でこちらを見つめている





『…気になるもん』



「ッ!!」





繋いで無い方の手が俺の袖をギュッと握った






『わ、私のせいで迷惑かけてる訳だし…それでトシに何かあったら、…私が嫌なの』



そこには本当に心配する様な、でも少しイジケた様な子供っぽい姿があった




「本当に大丈夫だって…、」


『でもッ!!』



袖を握る力が強くなったのを感じた

瞳を見ると泣きそうなのを我慢してる様に、潤んだ瞳が俺を見詰めている








「…………ハァ〜」



参ったと言わんばかりにその場にしゃがみ込む


なんだソレ、…なんだその可愛さは、どっから持って来たんだ


しかも、



『…トシ?どうしたの?』


手を繋いでいるため必然的に同じ様にしゃがみ込んだ稟と目を合わせる




「…お前、総悟とかの前ではシッカリしてんのにな…」



最近は俺の前ではそんな事もなくて、以外に子供っぽかったりヌけてたりする



『え?…いや、それはあの、2人がシッカリしてないから自然に…、トシはそんな事ないからで…えっと、』




突然の事にビックリしながらワタワタと必死に説明する稟

…それは、俺の前では素で居られるってか?



自然と口角が上がるのが分かった

つまり総悟の知らねェ稟を俺は知ってるって事だ





「…無理は本当にしてねェから、だから…もっと俺を頼れって」



『!!〜〜…うん!!ありがとう!!』



少し照れた様なビックリした様な顔のあとに、今日一番の笑顔でそう言った




「あ〜ーー…ヤベェ」



『??』


今のはちょっと、マジできた




「悪ィ…マジで好きだわ」



『ッ!!〜…//』



さっきから精一杯過ぎた俺は直ぐに頭を下げた



だから気付かなかったんだ
稟も俺と同じ様に顔が真っ赤だった事に…





(俺が思うに、)

(俺はどんどん稟が好きになって行く)




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