「えっと‥‥とりあえず、天野さんはこの部屋を使って貰うね」





副長の許可が出るまで天野さんは隊士としてではなく、悪魔で幕府からの客としての扱いになったのだ



女の子だからと言って、問答無用で追い出さな‥‥帰せないのは、この子が松平のとっつぁんから直々の命でやって来たからだろう


いつもめちゃくちゃな事を言う人だけど、俺たち真選組はあの人にそれなりの恩がある
俺たちの都合だけでとっつぁんの面木を潰せない


よって、他の隊士達はまだこの子はとっつぁんの紹介客と言う話で止まっている



『ありがとうございます』



‥‥そして俺、山崎退は真選組にいる間そんな彼女の世話係…元いい見張り役になったのだ


ペコリと頭を下げる彼女
副長からは愛想が無い子と聞いていたけど‥‥

確かに無表情で取っ付きにくそうだ



けど、ただ緊張してるだけの普通にいい子‥‥に見えないこともない


「暫く居心地の悪い思いするかも知れないけど、分からない事や困った事があったら何でも言ってね」



副長が局長と一緒にとっつぁんの所に出向くのは週末

少なくともそれまでの間、俺は天野さんがおかしな事をしない様に見張らなくてはならない


なるべく笑顔で居るのは、居心地の悪さを少しでも和らげられればと思ったから




『…どうもありがとうございます。』


常に命の危険が付き物なこんな仕事だ


正直、見るからにか弱そうな女の子を女中としてでなく隊士として入れようとするなんて、とっつぁんも何を考えてるんだか…


まぁでも、入隊しに来たはずの彼女からしたら、いきなりのこんな仕打ちにいい気はしないだろう


何だかんだ言ったけど幕府から、と言ってもあのとっつぁんの紹介だ
きっと幕府のお偉方の問題児でもまた押し付ける魂胆なんだろう


天野さんの為にも、早く副長達がケリを付けてくれると良いんだけどな‥‥


庭をボーッと眺める彼女は、やっぱり刀を握るには余りにも頼りない様に思えた



(あんな細い身体で刀握れるのかな‥‥?)



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