『……うそッ…!?』
受け入れがたい現実を目の前に…私はその場を動くことが出来なかった…
一体誰がこんな事を…!?
ー30分前ー
『フンフフンフフ〜ンッ♪』
鼻歌交じりにルンルン気分で私はある場所に向かっていた
今日は天気も良くて洗濯物もバッチリそうだし、
沖田さんと土方さんの喧嘩も無くて掃除も楽ちんだったし
近藤さんも屯所で大人しくしてるから今の所怪我の手当ての心配も無いし!
『今日は平和だァァア!!』
毎日何かしら騒がしい真選組
それはそれで楽しいけど、やっぱり偶には平和な日も欲しい訳で、
そして待ちに待ったその平和な日、
せめて今はこの平和な時間を有意義に使いたい…!
そんな時の為に用意していた物があった
『まさかこんなに早く出番が来るとは…』
昨日の朝早くから3時間並んで買った甲斐があったものだ
タンスの奥に隠したばかりの箱を出して、居間に向かう
『あ、そだ…お茶も淹れよっと!』
居間のちゃぶ台に箱を置いて、今日こそはお菊さんみたいな美味しいお茶を淹れようと部屋を出た
『…そして、戻ってきたら、箱が開いてて…中に入ってた…私の…饅頭がッ!!…消えてたんですッ…!!』
ドンッと怨めしげに机を叩いて咲夜が言った
『4つも入ってたのにッ!!全部綺麗に無くなってたんですよ!?』
「…それで?」
『犯人を見付けて下さい!立派な事件ですよッ!!窃盗罪的な感じですよコレは!!』
そう言ってさっきよりも強く机をバシバシと叩き出した
「俺の机が壊れるだろうが」
『土方さんの机なんかよりも、早く犯人を捕まえて下さい!』
饅頭が無くなった事がよっぽど許せないらしく、俺の机を叩いて怒りをぶつけている
「別に饅頭の1つや2つまた買えば良いだろ」
『4つですッ!!しかもただの饅頭じゃ無いんですよ!?…3ヶ月に1回しか発売されない、スペシャルな饅頭なんですッ!!』
前回買い逃したから楽しみにしてたらしい咲夜は、何としても犯人を見付け出さんと言う思いで俺の所まで来たらしい
「また次買えば良いだろ」
『フザケんなッ!!…ですよ、何としても犯人見付けて取り返してやります!!そして、相応しい罰を与えてやります!』
「お前今一瞬敬語忘れただろ」
『まァまァ、』
「…ったく」
……ちなみに、饅頭を食ったのは俺である
勘違いしないで欲しいのは、全て俺が食べた訳ではないと言うことだ
俺が食べたのは1つ
俺が見付けた時には既に1つ無くなっていた
4つとも無くなっているなら、俺の前と後にも食べた奴がいると言う事だ
確かに3ヶ月に1回しか発売されない訳あって、中々の旨さだった
あそこまでマヨとマッチする饅頭も珍しい
まさかそれが咲夜の物とは知らず、つい取ってしまった
言い出すタイミングも見失ってしまい、一緒に犯人探しをする流れになってしまっているが…
まァバレそうになったら山崎辺りに擦り付けるか
「どうやって探す気だよ?」
さっきから探す探すって、一体何を手掛かりにするつもりだ…?
と言うか、第一に見付かったとしても俺は既に饅頭を食っちまった後だし
後の奴等も食べた可能性が高い…
そんな俺の考えを知ってか知らずか、咲夜はフッとした顔をしている
『フッフッフッ…忘れてるんじゃ無いですかな土方氏…こう言う時の為に彼が居るんじゃ無いですか!!』
「彼…?」
パチンッと指を鳴らした
『ヘイッ!!かもーんマコちゃん』
「ワンッ!!」
出て来たのはそう、犬だった
『皆さん忘れてたかもですが、我ら真選組の代表犬!!』
「代表犬って…犬ソイツしか飼って無ェだろ」
『増えるかも知れないじゃ無いですか?…それにマコちゃんにかかれば犯人の1人や2人楽勝ですよ!!』
「訓練もして無ェ犬にそんな事出来んのか?」
『で、出来ますゥ!!…何なんですか?さっきから…ハッ!…まさか土方さんが食べたんじゃ…!?』
「!!…そ、そんな訳ねェだろッ!?」
『…ですよねェ…もしマヨなんか掛けて食べてたら、マヨ禁止令を近藤さんとお菊さんに出して貰う所でしたよ』
「ア、アタリ前ダロッ!!」
ヤッベェよ、絶対ェ言え無ェよ
コリャ本当に山崎に餌食になって貰いそうだな…
『じゃあ早速…マコちゃん、同じ臭いのする奴を噛み千切る勢いで思いっ切り噛み付いてね!』
「ワンッ!!」
「何笑顔でとんでも無ェ事命令してんだ!!」
俺の言う事を思いっ切り無視して、饅頭が入っていた箱を犬に近付ける
『よしッ!行ッけェェエ!!』
「ワンッ!!」
ガブリッ
『「………」』
俺の脚に激痛が走った
(やっぱりお前か土方ァァア!!)
(待てェェエ!!話せば分かる!)
[*prev] [next#]