嗚呼、神様仏様ついでにお母様、どうかお助け下さい


咲夜はなぜこんな事になってしまっているのでしょうか…





タッタッタッターーーー



『…ハァ、ハァ…ッ!!』



タッタッタッタタッタッーー




これでもってくらい全速力で廊下を走り抜ける私

チラッと後ろを見ると、彼は私以上の凄いスピードで追い掛けて来ている




『ヘ、ヘルプミィィイッ!!』







ことは30分前に遡る









「本当に大丈夫なんだよね?」


『わ、分かってるってば!!』



「いや…その様子で言われてもね、」


『……。』



覚悟が決まってはや数日
こんなに自分の性格を恨んだのは初めて…な気がする


今の私を一言で言うならば、theヘタレ


「まァそれだけ意識してるって事だろうけど…沖田君気付いてるよ?」


『…知ってる、目…合うもん』



告白しようと決めてから、私のヘタレに更に磨きが掛かった


最近では、沖田君が視界に入るだけで隠れようと身体が勝手に動いてしまうのだ



…そんな訳で最近全然話すどころかまともに顔すら見てない始末



『…ヤバい!このままじゃヤバい!!』


「ヤバいだろうね」



このままだったら私の事だ
告白どころか沖田君を見かけても喋れなくなる…てか、それ以前の問題



『どどど、どうしよう葵ィィイ!!』



告白がこんなに大変だなんて…

世間の若者はこんなハードな事を日々繰り返してたなんて…

…なんて私に優しくない世界なんだ!!



「コレばっかりは私にはねェ…、諦めて覚悟見せろとしか」


『そ、そんな…』



な、なんてこった…

ここに来て、ガラガラと私の覚悟が崩れる1歩手前まで来てしまうなんて…







「…あ、そだごめん、私先生に呼ばれてるんだった」


『…いってらー…私もジュース買って帰ろっと、』



今日は何を買おっかなァ

そう言えば前に自販に行ったら偶然沖田君と会った事あったっけ…

あの時はスッゴいびっくりしたな


また今回も会ったりして…ってそんな訳無いか、
と言うか今会っても喋れる気しないしなー…あはは



自販機に付いてもやっぱり当たり前だけど沖田君の姿は無い


ホッとして、お金を入れる
ガタンとミルクティーが出て来た所で呟いた



『…そりゃ、そんなに毎回会う事なんて無いよねー』



「誰に?」


『だから沖田…君…に……ッ!?』



声のする方を向くと、そこにはなんと沖田君の姿が

…うそーん


「俺がどうしたんでィ」


『…あ…あの、』



…翔樹君の時と良い、なんでこんなタイミングで


ヤバい、久しぶりに沖田君の声聞いた…久しぶり過ぎて緊張する……!!

じゃ無くて!!


あ…そだ、覚悟決めて、伝えるから、えっと…言わなくちゃ!



「…月城?」



『…す、』


「酢?」





『すんませんッしたァァア!!』




自分でもびっくりするぐらい大きな声で叫んで、そしてそのまま逃走した





タッタッタッターー




言わなくちゃと思った、確かに言おうとした

だけど目の前の沖田君を見るとどうしても言えなくて、色々込み上がって来て…出て来たのは謝罪の言葉だった




『…ハァ、ハァ…ッ!!』




…どうしよ
思いっきり逃げてしまった、次会った時どんな顔したら…





タッタッタッタッタッタッターー





『…え?』


後ろから誰か走ってくる音が聞こえる、それもかなり早い



足を止めずに振り返るとそこには凄いスピードで走ってくる沖田君の姿、がァァア!?

しかもなんかめっちゃ怒ってるゥゥウ!!?




『ヘ、ヘルプミィィイッ!!』



こ、殺される!?
思わず叫んで私もスピードを速める


どれだけ走っても追いかけて来る沖田君


トイレに逃げ込もうと思った時には既に通り過ぎていて、ただひたすら廊下と階段を走り続ける








『…ハァ、ハァ……しくったッ…!!』



何も考えずにただ走り続けた結果、屋上に来てしまった



『…ハァ、ハァ…ッ』


これじゃあもう逃げられない…ッ!
そう思ったのもつかの間、後ろでガチャンと扉の閉まる音がした


「…ハァ、…もう逃げられねェぜ…」


『……ッ!』



遂に追い詰められた私は1歩、2歩と後ろに下がると、それにあわせて沖田君も近付いてくる



『ッ!』


そして、遂にガシャンとフェンスにぶつかる音がと共に私の動きも止まる…


横に逃げようとすると、それより早く沖田君の両腕で私の逃げ道を塞いでしまった



「…逃げらんねェっつったろ」

『ッ!!』


さっきまでの怒った顔とは一変し、ニヤリとして、どこから持って来たんだと思う、色気がかった声で私に言った


いつもと違うその声に、思わずズルズルと座り込む…







「さて、何から聞こうかねェ…」


動かない私をみて、私の良く知る彼に戻り同じ様に座る


『……』


そんな様子を私はただボーッと見ていた





「まず、何で最近俺を避けてたか、さっき謝った事と関係してんの?」



沖田君が何を聞いても何故か言葉が出なくて、ただ黙って聞いていた



「…それとも前に泣いた時に、俺なんか月城にしたとか?」


『…え?』


「…姉ちゃんの鞄買った時も、直ぐ帰ったし…その後会った時も、様子変だった」


『…そ、だったかな…?』



…気付いてたんだ、
嬉しく感じる反面、気にしてくれたんだと思うと何故か苦しくて泣きそうで

…沖田君の顔が見れない



「だから、前に俺が何かしたのかと思ったんでさァ…」


『……』



…前にも思ったけど、沖田君は私の事を考えてくれてる

翔樹君の事をちゃんと応援してくれて、考えてくれて、慰めてくれた

今だって本当に私の事を心配してくれてる



『……、ちがうの』


それに比べて私は自分の事ばっかりで…まだ沖田君に本当の事何も伝えれてない


「?」




『私、ホントにそんなんじゃ無くて…本当に全然違くてッ……そんな心配、本当に…』




こんな時にも、自分の言いたい事が言えない…本当嫌になる


「…月城?」


『…ごめん、なさい』




言いたい事は沢山あるのに、声に出そうとすると何て言えば良いのか分からない

ただごめんなさいを繰り返した




「…何で泣いてるんでィ……」


『…え、?』



気付けばまた私は泣いていた

拭いても拭いても止まらなくて、それが嫌なのに余計に涙が出てくる

悔しい、なんで私はこんななの…


顔を反らして涙を止めようとすると、頭にポンッと何かが乗った

それが沖田君の手だと気付いた時には、ゆっくりとあやすように私の頭を撫でていた




「月城、ゆっくりで良いからちゃんと自分で言ってみなせェ…怒んねェから」


『……』




ゆっくりと、優しく撫でてくれる動きが、本当に心地良くて

いつの間にか止まった涙の代わりに、私の口が自然に開いた



『……しょ翔樹君が好きだったのは、ずっと前で…だから、本当はもう好きじゃ無かったの』


「…」


頭を撫でる手は止めずに沖田君は聞く



『…だから沖田君が協力してくれた時も、嬉しかったけど…苦しくて、……あの時泣いたのも、そのせいで…嘘がバレたら嫌われるって…思ったからで、』


話す私を手を止めず黙って聞く彼が何を思っているのか、私には分からない



『…ごめんなさい』



嫌われるのは仕方がない、そう覚悟して最後に改めて謝った






少しして、大きく息を吐いて言った



「…で?」


『…え?』



全部話した私に対して沖田君は、怒る訳でも呆れる訳でも無く、ただその一言だった



「あの時の理由とは分かりやした、…で?最近俺を避けてた理由は?」


『それは…、』



「俺ァ元々それを聞くつもりだったんでィ」


さっきの今でそんな事を言う沖田君にポカンとする



『…怒ってないの?』


「怒らねェって言っただろ」



それよりもと訴える沖田君に、またポカンと口が開く


…と言うかそれよりもってヒドいな
イヤ、気にしてないなら何よりなんだけど…



「でもな、」



『?』


「また嘘付いて本当の事言わなかったら、怒るかもねェ」



『!』



ニヤリと笑って言った


「ほれ、言ってみな」



『……』



笑みを崩さず言う沖田君はどこか楽しそう

そして何より、言うまで絶対に逃がさないと言うオーラがビシバシと伝わってくる



『…そ、その…』



どうしよう…言うべきなのかな…
でも言って気まずくなるのも…

いや、でも変に嘘付いて今度こそ本当に嫌われたら…


『あ、あの…ね、…えっと、』



イヤイヤイヤ…でもやっと覚悟決まった所だし、

こんなチャンスもう無いかもだし!



『…だから、!』


「!」



もう、どうにでもなれッ!
…的な勢いで……言ってしまえッ!



『お、沖田君ッ!!』


「…おう」



ガバッと前を向くと、近い距離で目が合う




『……ッ』



「……」



『………ッ』



「……」





『…わ、私は…ッ!』


「…おう、」




『…お、沖田君がッ!!』


「……」



『…す…好きですごめんなさいッ!!』




「………ん?」



言った途端に、色々込み上がって顔を膝に埋める


『……ッ』


い、言ってしまったァァア!!
うわァァア!もう顔上げれない!

どうしよ…!



「…月城、」


『…ッ、はい…』


「何で今謝ったんでさァ…?」



聞き間違い?と聞く沖田君に、恐る恐る顔を上げる



『…だって前に、面倒って…迷惑だって言ってたから……です』


「……」




『で、でも私別に被害者ぶったりしないしッ…煩い事も言わないから…その、嫌いにならないで…?』


「!」



これが沖田君にとってはもう迷惑な事なのかも知れない…

でも、嫌われたく無いのも事実で、

前みたいに普通に話せる関係でいたい、壊したく無い




「俺が、」

『…ッ』



「俺が言いたかったのは、ロクに知らねェ奴の事で…だから月城は、別にそうじゃ無ェだろ?」

『…?』




沖田君言ってる事が良く分からなくて、頭の中に?がいっぱいになる



「…だから、嫌いになんかなんねェ、って事でさァ」



『!』


「むしろ、」


『じゃあ…ッ!』



嫌いになんか、ならない…嫌いになんか…ッ!!



『これからも、今まで通り友達で居てくれるの!?』



つまりそう言う事、だよねッ!?





「…………あり?」



『…良かったァ、私本当に嫌われたらどうしよう、って…』



本当に良かった!!
うわァァア、ヤバい涙出て来そう!



今なら何でも出来そうな…あ、そうだ!!




『あ、あの…沖田君ッ!』


「ッ!…なんでィ…」



ずっと、ずっと、本当にずっと言いたかった事…、



『もし、良かったら…私と、』


「…ッ!」





『連絡先交換して下さいッ!!』


「………おう」





あいあむヘタレ!!

え、本当にッ!…ありがとう!!
…おー




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