「『………』」




彼女が出て行った方を見て、私の中で色々思う事もあるけど


今、私が一番思う事はただ1つ…




『………。』





気まずい!




もう本ッ当に、ただただ気まずい!



この間逃げちゃった事もあるし、さっきの事もあるしで、思う事は本ッ当に沢山あるけど…



今この何とも言えない空気をどうしたら良いのか全く分からない!




何か話すべき?
授業に戻るべき?

それともこの間の事を謝るべき?






「…月城、」



『はい…ッ!!』



突然呼ばれて、そのまま彼は言った



「今から暇?」



『?』



「暇なら付き合って欲しい所があるんだけどねィ」




『…えッ、つ、付き合う!?』













『…確かに、1人でこのお店入るのは勇気いるもんね』



目の前に建っている、見るからに女の子向けの店を見ながらなる程と納得する



「…だろ?」




そう…さっき言っていた、沖田君の付き合って欲しい所とはこの店の事だった




一瞬、付き合って欲しいなんて言うからプチパニックになりそうだったけど

今はパニック所の話じゃ無い




…だって今、私は……!!


学校を!!
サボって!!
沖田君と!!
2人で買い物ッ!!!


これって、他から見たらデ、デートに見えるんじゃ……!?



とりあえず、緊張し過ぎて内臓的な物が出て来そうなのを我慢しながら店に入る











「い、いらっしゃいませ……あの、…大丈夫…ですか?」



『………はい』


「…プッ」




緊張し過ぎてカチコチだった私は、店に入った瞬間に何も無い所で盛大にコケた

…しかも顔から




「怪我はされてませんか?」



『……はい…大丈夫です、』




それを見ていた店員さんが急いで駆け寄ってくれたけど、今はその優しさがツラい…

そして、その様子を沖田君が見てると思うと更にツラい




ヒリヒリする顔と脚に堪えて立ち上がり、沖田君を見ると顔を反対に向けている

そして、微かに肩が震えていた




…てか、さっきも聞こえたけど、沖田君完璧に笑ってるよね




『沖田君…笑ってる…?』


「…別に、笑って無ェ…クスクス」



『今完璧に笑った!てか、その笑い方絶対ワザとでしょ!!』



コッチを向かずにいる沖田君
余程ツボに入ったのか、未だに肩が震えている





『…か、買い物付き合うの辞めよっかなァ……』


「悪ィ、悪ィ」




以外にも直ぐに笑いは止まり、反省の無い謝罪が返ってきた



しょうがないから気を取り直して、商品を見渡しててふと思った




『…そう言えば、何を買いに来たの?』



付き合って欲しいと言われただけで、何が目的か全く知らない


女の子向けの店に来るなんて…

沖田君が使う物は無いだろうし……ッて事は、





『…だ、誰か大切な人に…プレゼント…とか?』




言った瞬間に後悔した


もしそうなら、私はそれを一緒に選ぶ為に呼ばれただけ…ってか完璧に失恋決定じゃん





「あー…大切な人ってか、まァそんな所」



クルッと視線を反らして沖田君は言った


…照れてる!?あの沖田君が、照れてるッ!?





『あ、…そう、なんだ』





「『………』」








…気まずい
さっきとは違う意味で気まずい



どうしよう…本当に帰りたくなってきた



沖田君の好きな人



ヤバい、泣きそう!……でも、それって誰なんだろう…



『その人って…どんな人?』



聞きたく無いと思っても、勝手に口が動いてしまう



「…優しくて、いつも俺を見守ってくれる人でさァ…誰よりも俺の事を理解してくれてる」



『………』





びっくりした、


沖田君がその人について話してくれた事にも驚いた


けどもっと驚いたのは、いつもポーカーフェイスな沖田君が、その大切な人の事を話し出した瞬間、凄く優しい顔になったから




『…沖田君はその人が、大好きなんだね』




会ったことが無くても、沖田君が大切に思う人はきっと私がどう足掻いても無駄なくらい素敵な人なんだって伝わった



「まァねィ」




当たり前だと言う沖田君を、私はただ冷静に見ている




…不思議、さっきまでとは逆で全然悲しく無い

頭では分かっててもまだ心が追い付いて無いのかな…







『私の知ってる人?』



「………」



その質問に、沖田君は少し考えた素振りをしてから

ゆっくりと私の顔を見た




「…教えて欲しいですかィ?」



『……うん』



そう答えると、沖田君は静かな声で言った





「月城、」



『…え?』



「俺が好きなのは月城、アンタでさァ」


prev next
back


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -