私の予想外の反撃に、暫く中沢さんは唖然とした様子で居たかと思えば、ハッとした様に言った



「だから何って言うか……じゃあ月城さんは何を頑張ったの?」



『…え?』



「だって好きなんでしょ?だったら今までその為に何を頑張ったの?」



『…何をって…、』



私が今まで頑張った事って……



初めに屋上に呼び出して…は葵がしてくれた事で、

一緒に翔樹君のバイト先に行った……のは沖田君が気紛れで誘ってくれて



…あ、でもその後自分で友達になってって勇気出して言えたんだ



後は…教科書を借りに行った……だけ?


…と言うか、2つ共恋愛としてじゃ無く友達としての方が強い…?



…もしかして…私は、自分が今まで思ってた以上に何もしてなかったの?




「…何もしてないよね?だって私ずっと沖田君の事見てたけど、月城さんが何かしてるの見たこと無いもん」



勝ち誇った顔で私を見る
そして、真剣な顔で言った



「私はずっと頑張ってきたの!…フられても諦めずに、…沖田君に振り向いて貰える様にいっぱい頑張ってるッ!!……なのにッ…急に出て来て私の邪魔をしないでよッ…!!」




『……。』





飛び付いて来そうな勢いで中沢さんは言った

…確かに中沢さんから見たら、私はいきなり出て来た存在なのかも知れない



大して自分の力で頑張りもしないで、流れでここまで来たって言われても否定出来ない




『…でも、私もずっと沖田君が好きだったよ』



中沢さんみたいに行動に移す勇気が無くって、ずっと遠くて


少し近付いたと思ったら、前進した所か後退してしまった所も多いけど…


それでも沖田君を好きな気持ちは、負けてるなんて思った事は無い



中沢さんが知らないだけで、私みたいな思いの子は沢山居ると思う




「…だから何よ?頑張って無いのには変わり無いでしょ?…大して知りもしないのに、付き合える訳無いじゃん!?」






確かに、お互いの事が分からないのに上手く付き合えるなんて、滅多に無いのかも知れない…




『…じゃあ、沖田君は中沢さんの何を知ってるの?』


「…え?」





『中沢さんは沖田君の事色々知ってるかもだけど…沖田君は?中沢さんの何を知ってるの?』





さっきから聞いてたら中沢さんの意志ばっかりで、沖田君の気持ちが何処にも入ってない





『もし中沢さんの事を余り知らないなら、それは…』


「私の努力が無駄だって言いたいのッ!?」



学校中に響き渡るんじゃないかと思う様な怒鳴り声が響いた



「私はッ!月城さんよりもずっと頑張って来たの!!好かれ様と努力もしたし、誰よりも好きな自信だってあるッ!!…それが……全部無駄だって言いたいの!?」


『違ッ…!』


「違わないッ!…でもそれって何もして来なかった、只の言い訳じゃん!?キレイ事言ってるだけでしょッ!?」



『違うッ!私が言いたいのは!!』






〜〜〜♪〜〜〜〜♪





「…あ、やべ」



『「!?」』



突然何処からか聞こえてきた着信音
そして聞き慣れた緊張感の無い声



それに先に反応したのは、私では無く中沢さんだった



「…お、沖田君…何で……?」




キョロキョロと周りを見渡すと、直ぐ近くの水道タンクの後ろからムクリと姿を現した



「あー…昼寝してた」



未だに鳴り続ける携帯をぼーッと見ながら呟いた



…え、て事はもしかして…沖田君今までの話全部聞いて、た…?



『……うそ…』




今までの事を思い返して、サーッと血の気が引いていくのを感じた



「……。」




中沢さんも同じなのか、戸惑った顔のまま固まって動かない





そんな私達にお構いなく、軽い舌打ちをした後沖田君は電話に出た





もし…私が沖田君を好きだって言った時から、沖田君が起きてたとしたら……


…嘘が、バレた…?


今度こそ本当に、沖田君に嫌われる…




「月城、」



『ッ!!』



そんな事を考えている私を知ってか知らずか、沖田君は私を呼んだ






「…授業始まってやすぜ?」




『……え?』




想像と違う言葉に驚きながら時計を見ると、授業が始まってもう15分が経っていた



「戻んねェなら…」


「沖田君ッ!」



突然、黙っていた中沢さんが叫んだ


そこには、さっきまでの戸惑った顔は何処にも無く

今まで以上に真剣で、でも少し照れが含まれる顔をしていた



そして、私が居るのもお構い無しに言った





「…好きなの」


「……。」



「…沖田君が…私に興味無いのは知ってる。…でもッ!これから先もそうだとは限らないから…!!」











「私の事をッ…見て下さい…ッ!」



深々と頭を下げた



その姿に驚いた様子の沖田君は、少し困った様に私を見た


その顔は、私と初めて屋上で会った時とも、前に中沢さんをフった時とも違う顔だった



『……』



心から沖田君が思ってる事を、ちゃんと伝えて欲しい


…中沢さんみたいに、本当に沖田君を思ってる人に、
只突き放す様な言葉では、諦めたくても諦めが付かない事だってきっとある




どんな言葉でも、飾られたものより、素直なものの方が心に届く事だってあると思う

それが伝わったのか、沖田君は静かに中沢さんを見詰めた




「…ごめん、」


「…ッ!!」




「俺が、アンt…中沢の気持ちに応える事は、無い…ごめん、」



「…うん」








「…ありがとう」



「…ッ!!」







「…こちらこそッ…ありッ、がと…」



目に溜まった涙を零さずに、私が今まで見た誰よりも綺麗な笑顔で彼女は言って

静かに屋上を出た



prev next
back


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -