ひとみとまぶた



少しずつ気温も下がって、雪もちらつくようになった12月。
空が雲に覆われてしまう日も多くなったが、
今日は久しぶりに暖かな陽射しが照らしている。
炎山は変わらず熱斗の見舞いに来ていた。
熱斗が不眠症にかかったのが昨年の12月だから、もう1年経ったのだ。
春前からは眼に映るものの色が彩度を失くしていく原因不明の病にもかかり、
それはもう色々あったがこうして年の終わりを迎えようとしている。

2人他愛ない話をして、少しの静けさのあと
熱斗がまた口を開いた。

「炎山の色はきれいだな」

「……褒めても何も出ないぞ…………。?待て、お前見えるのか……?」

夏の時はまだ進行がそこまでじゃなかったから分かるが、冬になった今はさすがに殆んど見えなくなっているはず。
少し焦る炎山を見て熱斗はちょっと笑った。

「色自体が薄かったり、色に差がないと見えないけどな。
炎山は赤と黒と緑だからしっかり見えるし」

青色の彼はは炎山に顔を近づけ、茶色のその瞳でとらえる。

「それに目がきれいだ。きれいな青色、宝石みたい」

「!」

まっすぐ見つめられてさすがの炎山も耳まで真っ赤になってしまう。
それが熱斗には今の状況が幸か不幸か分からないので、
隠せない恥ずかしさを込めた小さい小さい声で炎山は「熱斗、近いぞ」と口にすると、
熱斗は顔を離しながら少しいたずらっぽく同じように小さい声で
「キスしてくれないかな。って思ったのに」
そう言った。
全く今日のこいつはなんなのか、炎山は思いながら熱斗に言われて改めて問う。

「してほしいのか?その…」

「うん。してよ、炎山」

「じゃあ、目…閉じろ」

熱斗は「ん」と素直に目を閉じる。
炎山はほんの少し戸惑ってから、その閉じられた目蓋に優しく口づけを落とした。
時が止まってしまうような空気、白い病室。
もうすぐ日暮れになる
午後3時半の陽射しだけが
2人をゆるやかに照らして、見守っていた。










あなたはわたしのあこがれだから。



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