#01 At the beginning(4/15)


全身に激痛が走った。
頬に固く冷たい床の感触が伝わってくる。
眼鏡のフレームが肌に食い込む。

「……っ、いたっ…」

さくらは痛みに呻いた。

「……お嬢ちゃん?大丈夫か?」
突然聞声がかけられ反射的に顔を上げた。

目の前には眼鏡をかけ青色の制服を着た男性が覗きこんでいた。
その顔には困惑の色が窺える。
そして、顔立ちが……
「一体何処から来たんだ?」
――日本人じゃない……。
痛みに耐え警戒しながら立ち上がり眼鏡の男性から距離を取った。

――グシャ

足元を見ると紙が床に散らばっていた。
「……っ、誰ですか?」
男の位置を視界に入れつつ周りを観察した。
本棚、机、椅子がある薄暗く簡素な部屋。
資料室?と冷静に考えた。
「おいおい、そんな警戒すんなよ」
掌をさくらの方に見せながら表情を緩め少しずつ間合いを詰める。
「俺はマース・ヒューズ。軍人だ」
「軍人…?」
さくらはそれ以上言葉を続ける事が出来なかった。
――取りあえず平和の国と唱っている日本に軍人?
では、ここはアメリカ軍の駐屯地なのか?
だとしたら何故ここにいるのか?
と非現実的な考えを巡らせた。

「お譲ちゃん?」
「っ!あの、ここは日本ですよね?」
「ニホン?……お嬢ちゃんの街の名前かい?」
軍人は言葉に眉をひそめながら尋ねた。

その反応を見てさくらは理解した。

ここは、

"非現実世界"なのだと……。

「お嬢ちゃん。単刀直入に聞くが……何者だ?」
先程と変わらず口調は物柔らかだが、
空気が変わったそんな気がした。
「この部屋には俺一人しかいなかった。仕事をしていた…。あぁ、床一面にばらまかれている資料を見ていたんだ。」
足元にあった紙を拾いそれを掲げ、机に置いた。
「すると、突然周りが光に包まれ突風が起こった。そして、お嬢ちゃんが現れた……」
「……ひかり?」
脳内に電流が流れたような衝撃が走った。
「彩芽!……扉……目玉……手……ある?……たましい、れんせい……しん、り?!」
雨のように戦慄が叩きつけていく。
さくらは絶叫した。







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