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うーん、と頭を悩ませる藤本獅郎。


にこにこと食えない笑を浮かべるのはメフィスト・フェレス。




「で、何が言いたいんだ?」



藤本がメフィストに問う。



「で?って、ただそういうことが遠い昔にあったなーって話ですよ☆
本当に惜しいことをしました。」



くいッと紅茶を飲むメフィストにそんな感情を思わせることはない。


「へえぇえ、つか卑弥呼ってほんとに存在したんだな…」



藤本はそうつぶやいて紅茶を一口飲んだ。



「まぁまぁ☆
当時はあまり日本人を見慣れないせいで何も思いませんでしたが、なかなかの美人でしたよ☆」



ああいうのをアジアンビューティーって言うんでしょうねぇ、とメフィストは楽しそうに笑った。


「美人か…」


「何を考えてるんですか藤本。彼女の齢は14ですよ。」


「14!?そりゃ若けえ、燐と雪男と同い年じゃねえか!!」


藤本は少し興奮したようにメフィストに詰め寄る。


「ちょ、その無精髭で私に近づかないでください…まぁ、どこかの歌にあったように齢14の女王様、ってとこですかね。」


あ、歌は王女様でしたか。


メフィストはのんきにお茶をすする。


「そういや、邪馬台国って結局どこにあったんだ?今は北九州のどこか、って言われてるけどよ」


メフィストはああ、と相槌をうって紅茶を置いた。


「北九州のどこか、ではなく…



ほぼ九州全土、でしたよ?」




ぶふーーーーーー



「うわ!!汚いですよ藤本!!!」



メフィストはとんできた紅茶をハンカチで拭きつつ、藤本にもう一つのハンカチを投げつけた。



「そりゃ驚くだろ!?そんな大国なんて習ってねぇよ!!」


「当たり前でしょう?歴史と実際ではまったくもって非なる部分だってあるんですから。
あれだけ領土が広がったのは姫巫女のおかげですよ。」



メフィストは新しい紅茶を出すと、(いつものあれで、)藤本のカップに注いでやった。


「おう、悪いな。
へええ、やっぱおもしろいなあー。実際とは結構違って。」


「まぁ歴史なんて時代と共に都合の良く改変されているものですし…」



メフィストはお茶請けのケーキを貪る。


「14歳、か…。」



藤本の脳裏に浮かぶのは己の息子たちの姿。


「あいつらと同じ年なんて信じられねぇな…」



「……。」


メフィストはそんな藤本を見て笑う。


「(すっかり父親の顔、ってやつですねぇ…)」









そんなこんなで二人のお茶会はメフィストの思い出を語らい、終幕となったのだ。









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