たくさんの蝋燭が煌めく肌寒い教会の中は、なんとも幻想的だった。









暗い面持ちの人や、啜り泣く声が聞こえる中




一際大きな声をあげて泣いているのは、サラだった……










「どぅしてぇぇぇ!!!

どうして、貴方が死ななきゃいけないの!?どうしてよぉぉ」







スチュアート公爵の柩の前でサラは声を上げて泣いていた。




いつも強くて、気丈な彼女はそこにはいなかった。











オックスフォード邸での晩餐会の夜。





サラの夫・スチュアート公爵は何者かに殺害された。








身に付けられていた貴金属がいくつか盗まれていたことから、

強盗殺人の線が濃いと指摘されているが真相は定かではない。







「サラ……」








悲しみにくれる親友にかける言葉もみつからなかった。

もし、私がサラの立場だったら……




きっと、誰の言葉も耳に届かない。










チャールズが死ぬ。



考えられない。そんな恐ろしいこと。










でも……








(いったい誰が、サラの夫を……)










名前はスチュアート公爵の棺の前に立ち、献花を添える。







急所を抉られ、むごい殺され方をしたとは思えないほどスチュアート公爵は安らかな永い眠りについていた。








いつまでも遺体から離れようとせず
親戚に引き離そうとさせられているサラ。











その光景を見て、名前がサラに声をかけようとする刹那……










「あら、グレイ伯爵夫人じゃありませんか」









フローリスのホワイトローズの香りに、勝利を確信した女神のような、勝ち気な蒼い瞳。








「オールコック夫人……」



「今回の件は、私もとても悲しいわ。スチュアート公爵夫人は、お気の毒ね」








そう言う男爵夫人の表情は、とても悲しそうには見えなかった。








「はい……」








愛想笑いができる気分でもなくチャールズとのこともあり、思わず素っ気ない返事をする。












「そういえば、グレイ伯爵夫人と公爵夫人は幼なじみだったんですって?」






オールコック夫人が、好奇心の光を宿した瞳で尋ねる。



こんな時にあまりいい気分にはならなかったが、名前はしぶしぶ質問に答える。






「えぇ」








「まぁ、それは……。グレイ伯爵も随分と酷なことをするのね」



ページ数[1/3]
総数[49/80]





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -