『とぼけないでよね。
アンタが起こそうとしてることは分かってる』
「ちっ…違うッ
私は何もしてな…」
ドスッ
瞬きする間もなく、
男は急所を刺されて息絶えた。
『どっちでもいーよ。真実なんて』
…――すべては女王の御心次第なのだから…
白銀色に輝く髪を後ろに流して、
儚い命を惜しみもなく散らす。
月明かりに照らされた美しい殺人者。
(…ッグレイ!?)
零れ出しそうになった悲鳴を必死の思いで飲み込む。
見てはいけないものを見てしまった。
恐怖で足が竦む。
今すぐその場から逃げ出したいのに、逃げ出せない。
エルザは残虐な秘密を知ってしまった。
(グレイが、人殺し……)
だけど、恐怖とは裏腹に別の熱い感情が込みあげてきていた。
(冷たい瞳で死体を見下す彼に……私はまた、溺れていた)
「いつになったら許されるのでしょうか」
この恋は。
続く??
← →
ページ数[2/2]
総数[46/80]