「いいのか?おそらく、今回の件は長く家をあけることになるぞ」
フィップスはちらりと名前の方を一瞥して言った。
『構わないよ。それに、あのクソガキは前々からイジメてやりたいと思ってたしねー』
「なら、その件はお前に任せる」
話が済むとフィップスはソファから立ち上がり、ジョンと共に部屋を出て行った。
***
フィップスさん達が帰ると部屋には、私とグレイ伯爵しかおらずなんとも気まずい空気になった。
(そういえば、昨夜のことを忘れていた……)
昨夜、夫とはいえ いきなり強引に押し倒されたことを思い出す。
空気を変えようとあれこれ話題を考えていると、グレイ伯爵の方から口を開いた。
『じゃ、パーティーの準備しないとね……』
「た、楽しそうですねパーティー」
何とか話題を紡ごうとグレイ伯爵にそう言うと、彼は足を止め、私の目を見据えて言った。
『そういえば、名前さー
ボクのこと"グレイ伯爵"って呼ぶのやめたら?』
「……へ?」
『だって流石に、変でしょ?妻が夫をファミリーネームで呼ぶのは』
確かにそうだ。
なんだか流れでグレイ伯爵って呼んでたけど伴侶をファミリーネームで呼ぶのはおかしい。
『フツーに名前でいいから』
「わかりました」
『あと敬語も使わなくていいよ』
「!」
これは、グレ……チャールズが私に対して心を開いてくれたということだろうか?
『じゃ、ボクは何日間か仕事で家をあけるから、家のことはヨロシクねー』
(バタン)
そう言って部屋を出ていった。
一人部屋に残された名前は、彼が出ていった方向をむいて笑顔で呟いた。
「いってらっしゃい……チャールズ」
「君の白さに油断した」
続く??
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