時は21世紀初頭。


英国の黄金期を築いたヴィクトリア女王が、悠久の眠りについて100年余りが経ったグレートブリテン及び北アイルランド連合王国。








***










「やっと、着いたぁ……!!」










長かった夏を終え、金色の絨毯が石畳の歩道を彩る頃、英国では大学の新学期が始まろうとしていた。


12時間にも及ぶのフライトの末、日本からやってきた交換留学生の名前は初めてこの地に脚を踏み入れた。










「念願の英国!!あぁなんて素敵なの!」











母国とは全く異なる景色、町並みに瞳をキラキラと輝かせる。

ロンドンから電車を40分ほど離れたヨーロッパ屈指の学生街で、これから新生活をスタートさせる。









「楽しみだなぁ!こんな素敵な場所で素敵な出会いがあるといいけど……」






大きなスーツケースを転がしながらキャンパスの中に足を踏み入れると、1000年以上も伝統のある荘厳な建物群が名前の前に立ちはだかる。



(うわぁ……すごい!)







その風景に圧倒されていると、目の前に人がいることに声をかけられるまで気付かなかった。







「お嬢はん、新入生?」






ハッと我にかえり、声のする方に視線をやると個性的な風貌のお兄さんがニコニコと立っていた。




「この時期にその荷物ってことは、お嬢はんウチの大学の新入生やろ?」



少し訛りのある英語で話す彼は、得意げにそう聞いた。









「はい!日本から交換留学生としてやってきました名前といいます。よろしくお願いします」




「ほ〜、そらまた遠いとこから……ウチはジョーカー言うもんどす。なぁ、名前はんマジックとか興味ない?ウチらNoah's Magicっていう手品研究会やっとるんやけど、どや?」





「手品研究会?」




「せや!いっぱい練習も積んでもらはりますけど、大勢の人の前でマジックを披露できるし、名前はんみたいな可愛い異国のコならお客さんもいっぱい付きますわ〜!」



「でも、私 手品なんて……」







見るのは好きだが自分がお客さんの前で披露するというは話が別だ。

ジョーカーと名乗る上級生の勧誘を丁重に断ろうとすると、また別の声が聞こえてきた。





「あ!先輩なに新学期早々女の子ナンパしてるんすか」


「おぉ、ダガー。丁度いいところに」


「んもぅ〜姐さんに怒られますよ」






ジョーカーよりも年下らしい、金髪に黒髪のメッシュをいれた男の子が姿を現す。






(まずい……押しの強そうな人が2人も増えたらこの勢いに負けてしまう……)





メンバーが増えて勧誘を断りづらくなりそうになる前に、2人が話し込んでる隙にゆっくり後ずさりしていると、何者かにグイっと二の腕を引っ張られた。











『何してんの?留学生の君はこっち』







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