「ぐ……っグレイ!起きてたの?」
彼は、刺すような鋭い眼で私を捕らえる。
『質問に答えてよ。ボクに黙ってどこに行こうとしてたのさ』
私を離すまいと、腕を掴むグレイの手の力が強くなる。
「家に帰らないと……あの人が帰ってくるから」
『ダメ』
全部 言い終わらない内に私は彼に抱き締められていた。
「グレイ!離して!私、帰らないと……あの人に見つかっちゃう」
私は力の限り抵抗したけれど、グレイの力は予想以上に強く……華奢な体だけどやはり男の人なんだということを思い知らされる。
『名前、ボクと結婚して』
「……え?」
彼の一言で私の動きは一瞬止まった。
それどころか、世界の時間さえ止まった気がした。
『旦那と別れてよ』
彼は憂いを含んだ瞳で、私を見つめた。
その姿はいつも不敵な彼とはまったくの別人だった。
私の瞳から一粒の涙が零れた。
嗚呼、私は彼からこの台詞が聞けることを待っていたのかもしれない。
彼の一言で、一夜限りの恋に一筋の光が差した気がした。
だけど……
「ごめんなさい」
私は世界中の誰よりもあなたを愛してる。
だけど一緒にはなれない。
すべて気付くのが遅すぎたの
自分の本当の気持ちに
そして
貴方への愛に。
「真白い憧憬」
end.
あなたと人生を共有する事は私の憧れであり夢でした。
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