シゴト中。なにげなく相方にそう言ってみると、彼は顔を歪めた。












「仮にも陛下の姫君なのだ。呼び捨ては……」


『あーハイハイわかったから。で、何か知んない?』


「さぁな……そういえば、名前姫に他国から縁談が来てるらしいが」


『は?!』











フィップスの言葉に、思わず手にしていたティーカップを落としそうになる。








『縁談って……なに?』







なんとか冷静さを持ち直し、もう一度フィップスに尋ねる。












「フランスのナポレオン4世から名前姫に縁談が来てるそうだ。
名前姫がこの縁談を承諾すれば、フランスとの良好な関係が築け政治的にも英国はかなり有利になる」








何ソレ何ソレ。
意味わかんない。












悪気はないのは分かってるけど、丸で名前のことを物みたいに言うフィップスの言い方にちょっとムカつく。











けど、一番ムカつくのは……













名前に縁談がきてるって聞いて、何故かイライラしてる……自分。













***






「縁談……?」





「えぇ、そうよ。フランスのナポレオン4世から縁談が来てるのだけど、貴女はどうしたいかしら?」









英国の女王ヴィクトリア。


この国を「太陽の沈まない国」と呼ばれるまでに発展させ、歴代で最も輝かしい時代を作った偉大な母。



その母の頼みでも、この間までの私ならこの縁談を断っていたであろう。











だけど……






「勿論、英国第5王女名前がその話喜んでお受けします」









私の恋は死んだ。
だから縁談を断る必要なんかない。


瞼を閉じれば、思い浮かぶのはグレイと見知らぬ女が絡み合う情景。








だけど……最後だけ。


最後だけ我儘を聞いてくれますか?









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